最終更新日:2021/03/09
この記事では、トロンテス(Torrontés)の特徴や生産地、料理との相性など知っているとより楽しめる情報を解説します。
トロンテスは、アルゼンチン原産の白ブドウ品種です。
19世紀からアルゼンチンで栽培が確認されています。
トロンテスには以下の3種類の亜種が存在します。
トロンテス・リオハーノ(Torrontés Riojano)
トロンテス・サンフアニーノ(Torrontés Sanjuanino)
トロンテス・メンドシーノ(Torrontés Mendocino)
以下、各品種の特徴を簡単に記します。
3種の中で最も香味が強く、栽培面積もトップです(7,731ha)。
マスカット・オブ・アレキサンドリア(Muscat of Alexandria)とクリオジャ・チカ(Criolla Chica)の自然交配で誕生しています。
リオハーノとは同じ両親を持つ兄弟です。
しかし、リオハーノに香味で劣り、ライトでフレッシュなワインを生みます。
栽培面積は、リオハーノの1/4以下(1,661ha)です。
マスカット・オブ・アレキサンドリア(Muscat of Alexandria)の交配種ですが、もう片方の親は分かっていません。
サンフアニーノ同様、軽やかなワインを生みます。
栽培面積は、最も低い583haです。
通常はこれら3品種をまとめてトロンテス(Torrontés)と呼びます。
ちなみに、現在は上述の通り3種は明確に分けて管理されていますが、歴史的には長い間混同されていました。
また、スペインでもトロンテスと呼ばれる品種は存在しますが、スペインにおけるトロンテスはDNAが明確に異なるいくつかの品種を指し、曖昧な意味合いをもちます。
トロンテスは、アロマチックなワインを生むブドウ品種です。
トロンテスは果皮が厚く、濃いめの色調が多くのワインで見られます。
・マスカット、白桃、グレープフルーツ、レモンの皮
・白いバラ、ジャスミン、ゼラニウム
・白胡椒
マスカット系の強い香りが感じられます。
標高の高いエリアで造られたトロンテスには、白桃のような甘いフルーツに柑橘や花、スパイスの香りが重なりとても複雑で華やかです。
・アルコールは高めで厚みのある口当たり
・ドライで酸味はやや強くフレッシュ
・ほのかな苦味の引き締まった後味
甘い香りに反して味わいはドライの傾向があります。
ボディはしっかりしていながら豊かな酸味と花や柑橘のフレーバーが爽やかさを感じさせます。
後半には柑橘の内皮のような苦味が感じられ味わいを引き締めます。
トロンテスは、アルゼンチンで広く栽培されています。
栽培面積としては、アルゼンチン西部の中央に位置するメンドーサ州(3,777ha)、サン・フアン州(2,623ha)、ラ・リオハ州(2,061ha)が多いですが、ブドウの品質はアルゼンチン北西部のサルタ州(915ha)が最も高い評価を得ています。
サルタ州では、トロンテス3品種の中で最も香味の強いトロンテス・リオハーノが栽培されており、それに劣る他2種はほぼ栽培されていません。
サルタ州のブドウ栽培の中心地であるカファジャテ(Cafayate)は標高1500mを超える高地で、その高原の冷気と強烈な日差しが上質なブドウを育てます。カファジャテのトロンテスは最も個性的で高品質とされており、フルーツに花の香りが顕著に感じられます。
このように、上質なトロンテスはアルゼンチンの標高の高いエリアで多く生産されています。
トロンテスはアロマチックな白ワインなため、スパイスやハーブの香りが効いたエスニック料理や中華料理と良く合います(スパイシーでも辛味はあまり強くない方がおすすめ)。
果実味も豊かなため、鶏肉や豚肉料理にも合わせられます。
トロンテスは果実味とともに酸味も強めで柑橘のニュアンスやホロ苦味もあるため、生春巻きのような前菜料理はもちろん、揚げ物や肉の油っぽさも洗い流してくれます。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020
・Wines of Argentina (https://www.winesofargentina.org/en)