ピノ・ノワール

最終更新日:2021/03/09  

ピノ・ノワール

 

ワイン愛好家を最も魅了するブドウ品種のひとつが「ピノ・ノワール」です。

 

世界一高額なワインで有名な「ロマネ・コンティ」もこのピノ・ノワールでつくられています。

 

一体、ピノ・ノワールにはどんな魅力があるのでしょうか。

 

この記事では、ピノ・ノワールの特徴や産地、料理の相性などピノ・ノワールを楽しむ上で知っておきたい基礎知識をご紹介します。

 

ピノ・ノワールとはどんなブドウ?

ピノ・ノワール

 

ピノ・ノワールは、フランスのブルゴーニュ地方で長く栽培の歴史をもつブドウ品種です。

 

しかし、その起源は明らかにされていません。

 

かつては、フランスで「モリヨン (Morillon) 」「ノワリアン (Noirien)」「オーヴェルナ (Auvernat)」などと呼ばれており、その最初の記録は1283年に遡ります。

 

現在のピノ(Pinot)という呼び方が使われ始めたのは、14世紀中頃と考えられています(1375年の文献が最古)。

 

ピノ・ノワールのピノ(Pinot)は、フランス語の「pin(松)」に由来すると言われ、このブドウの房が松ぼっくりに似ていることから名付けられています。

 

ノワール(Noir)は、フランス語で黒を意味し、黒ブドウであることを示します。

 

わざわざノワール(黒)と付けるのは、ピノと付くブドウ品種はこれ以外にもピノ・ブラン、ピノ・グリ、ピノ・ムニエなどの果皮の色や特性が異なるピノ種があるからです。

 

ピノ種は突然変異を起こしやすいため、長い歴史の中でたくさん種類のクローンが確認されています。

 

上に挙げたようなブドウ品種も、ピノ種の突然変異から生まれたクローンのひとつであり、正確にはこれらは同じブドウ品種とも言えます。

 

ピノ・ノワールは、栽培が難しく最も気まぐれなブドウ品種とも言われています。

 

比較的早熟で、テロワールを選びます。

 

例えば、暑い地域で育てられると早く成熟し過ぎて、風味成分の乏しいワインになってしまいます。

 

栽培地としては、比較的冷涼な気候で、水はけがよい石灰質土壌が適しているとされています。

 

また、果皮は薄く繊細で、カビや病気に弱く栽培にも手間がかかります

 

このように、ブドウ栽培家にとってはハードルの高いブドウ品種ですが、ピノ・ノワールに魅了された人々が世界中で栽培にチャレンジしています。

 

ピノ・ノワールは、クローンの種類が多いこともあり地域や国によってたくさんの呼び方があります。

 

その中でも、ドイツの「シュペートブルグンダー (Spätburgunder)」イタリアの「ピノ・ネロ (Pinot Nero)」は覚えておくとワイン選びで役に立ちます。

 

 

ピノ・ノワールのワインの特徴

 

ピノ・ノワールのワインは多くの場合、単一品種、つまりピノ・ノワール100%で造られます。

 

例外として、シャンパンなどのスパークリングワインでは、シャルドネやピノ・ムニエなど他のブドウ品種とブレンドされることがあります。

 

ピノ・ノワール種の赤ワインは、高貴な香りと繊細な味わいが特徴です。

 

繊細であるがゆえに、ブドウの産地のテロワールを素直に表現し、スタイルにも幅があります。

 

基本的なピノ・ノワールの特徴として以下のような点が挙げられます。

 

 

ピノ・ノワールの外観

・やや明るい純度の高い赤色

 

果皮が薄いため濃度は淡めで、色は紫みは少なく純度の高い赤色が基本色です。

ピノ・ノワール 色

 

生産地や醸造方法、熟成年数によって色調は変化します。

 

 

ピノ・ノワールの香り

・赤果実 (ラズベリー、フランボワーズ、チェリー)

・花 (バラ、スミレ) ・ハーブ ・スパイス ・鉄 

 

 

華やかで複雑かつ豊かな気品を感じる芳香が特徴です。

 

基本は、赤系果実のフルーツやフローラルな香りが感じられ、産地によってハーブやスパイスなどのニュアンスが重なります。

赤い果実

さらに、熟成によって紅茶やなめし革、枯葉のような香りも現れます。

茶葉

 

 

ピノ・ノワールの味わい

・比較的軽やかで滑らかな飲み口

・豊かな酸味

・タンニンは少なめで渋みは穏やか

 

ピノ・ノワールワインの味の印象は、繊細でエレガントです。

 

他の品種に比べて酸味が豊かでタンニンは少ないため、とても柔らかくスムースな口当たりです。

 

アルコール度数や甘み、タンニンの量は産地や造りによって幅があります。

 

ブレンドされることは稀で、基本が繊細なブドウだからこそ、産地や造りの微妙な違いが感じ取れる点もピノ・ノワール魅力と言えます。

 

 

ピノ・ノワールの生産地とスタイルの特徴

 

冒頭に述べたように、現在ピノ・ノワールは世界中で栽培されています。

 

しかし、ここではその中で特に歴史が長く上質なピノ・ノワールの栽培が行われている産地を簡単にご紹介します。

 

 

フランス・ブルゴーニュ地方

ブルゴーニュ 畑

 

誰もが認める世界最高峰のピノ・ノワールの生産地です。

 

ブルゴーニュの中でも、特に「コート・ドール」と呼ばれる南北約50kmに細長く広がるエリアで上質なピノ・ノワールが栽培されています。

 

ここで造られるピノ・ノワールワインは、香り豊かで複雑かつエレガントなスタイルで、まさに他の産地がお手本にする教科書的なスタイルです。

 

また、コート・ドールの中でも村や畑によって個性があり、畑には特級畑や一級畑などの格付けもされています

 

有名な「ロマネ・コンティ」や「シャンベルタン」もこの地域の特級畑のひとつです。

 

このクラスのピノ・ノワールになると、20~30年熟成させてもまだ若々しさを保つ長期熟成能力を持ちます。

 

 

フランス・シャンパーニュ地方

シャンパーニュ セラー

 

シャンパンは、フランス・シャンパーニュ地方で造られる世界で最も上質なスパークリングワインです。

 

そのシャンパンにとって欠かせないブドウ品種がピノ・ノワールです。

 

ピノ・ノワールは、シャンパーニュ地方で最も多く栽培されているブドウ品種です。

 

シャンパンは通常、ピノ・ノワールの他、シャルドネ、ピノ・ムニエというブドウ品種をブレンドして造られます。

 

ピノ・ノワールは、そのブレンドにおいてヴォリューム感や複雑さ、コクを与える重要な役割を担っています。

 

シャンパーニュ地方以外でもピノ・ノワールを使ったスパークリングワインは生産されていますが、比べてみるとシャンパーニュのピノ・ノワールでしか表現できない魅力はどうしても感じてしまいます。

 

ちなみに、シャンパーニュ地方では、ピノ・ノワールを使った非発泡性の赤ワイン「コトー・シャンプノワ」やロゼワイン「ロゼ・デ・リセイ」も少量ですが生産されています。

 

ブルゴーニュ産のものよりも、よりスリムで軽やかな味わいです。

 

 

フランス・アルザス地方

アルザス

 

フランスのアルザス地方も、注目すべきピノ・ノワールの産地です。

 

ブルゴーニュに比べると果実の凝縮感やタンニンは穏やかで、華やかで若々しいチャーミングさとスムースな飲み口のワインが多く生産されています。

 

それでも、アルザスの特級畑のピノ・ノワールなどは豊かで複雑な香味に富んだ味わいで、かつブルゴーニュとは違う独特な個性が感じられます。

 

今後、地球温暖化でそのポテンシャルがさらに期待されている産地でもあります。

 

 

イタリア

フランチャコルタ

 

上述の通り、イタリアでピノ・ノワールは「Pinot Nero(ピノ・ネロ)」と呼ばれています。

 

主に北イタリアの冷涼な地域で栽培されています。

 

ロンバルディア州のシャンパーニュ製法でつくられる「フランチャコルタ」という高品質スパークリングワインでも素晴らしいピノ・ノワールが使われています。

 

 

ドイツ

ドイツ ピノノワール

 

近年、品質の向上が目覚ましい産地です。

 

ドイツでの赤ワインの消費が高まったことも影響し、栽培面積も増えています。

 

ドイツ国内でのピノ・ノワールの栽培面積は品種別第3位で、黒ブドウでは最も多く栽培されています(2018)。

 

多くのワインには、ミネラリーで透明感がありみずみずしい味わいが感じられます。

 

ドイツでは、ピノ・ノワールは「Spätburgunder(シュペートブルグンダー)」と呼ばれています。

 

 

アメリカ

サンタバーバラ ワイナリー

 

アメリカもピノ・ノワールの栽培に積極的な産地です。

 

その中でもオレゴン州、カリフォルニア州が産地として有名です。

 

特に上質なピノ・ノワールが生育する地域として「ソノマ・カウンティ」「サンタ・バーバラ・カウンティ」があり、ハリウッド映画の「サイド・ウェイズ」の舞台になったのもサンタ・バーバラです。

 

アメリカのピノ・ノワールは、ブルゴーニュ産に比べてアルコール感や凝縮感が強く、酸味は穏やかな傾向があります。

 

香りにもより甘いフルーツの印象が感じられます。

 

 

ニュージーランド

ニュージーランド

 

ニュージーランドもピノ・ノワールの産地として有名です。

 

1990年代に各地に広がり、この20年ほどで一気に栽培面積を増やしたまだ歴史の浅い産地です。

 

しかし、その生産地の拡大スピードとクオリティの向上は目を見張るものがあります。

 

今後、ブドウの樹齢が高くなってくれば、さらに上質なワインが期待できます。

 

ニュージーランド最大の産地である「マルボロ」、楠田ワインの本拠地の「マーティンボロ」、唯一の大陸性気候でピノ・ノワールの第2の産地「セントラル・オタゴ」が有名です。

 

 

ピノ・ノワールに合う料理 (相性・食べ合わせ)

 

ピノ・ノワールはタンニンが穏やかで繊細な味わいが特徴なことから、肉料理に限らず幅広く料理と合わせることができます。

 

例えば、以下のような料理を試してみてはいかがでしょうか。

 

 

赤身の魚料理

赤身魚

 

白ワインだと赤身の血生臭さが際立ちやすいため、赤ワインの方が適している場合が多いです。

 

ピノ・ノワールは、タンニンが濃すぎず、ワインの風味にも鉄のニュアンスが感じられるため、マグロやカツオなどの赤身の魚とよく合います。

 

ピノ・ノワールでもより冷涼な産地の軽やかなタイプがおすすめです。

 

 

和食

 

ピノ・ノワールの繊細なスタイルには、繊細な味付けの料理がよく合います。

 

その意味では、和食もおすすめです。

 

また、ピノ・ノワールは熟成によって、醤油やダシなど和の調味料のフレーバーが出やすいブドウ品種です。

 

さらに、根菜系の土っぽいニュアンスもあり、和の食材とも相性抜群です。

 

特に、ブルゴーニュ産の程よく熟成して落ち着いたピノノワールは、和食全般をやさしく包み込んでくれます。

 

 

煮込み料理

牛 赤ワイン煮込み

 

ピノ・ノワールのタンニンが穏やかで柔らかい味わいには、同じく柔らかく繊細な肉質の料理がよく合います。

 

例えば、ブルゴーニュの郷土料理の牛頬肉の赤ワイン煮込みは、ブルゴーニュのピノ・ノワールと王道の組み合わせです。

 

 

鴨やジビエ料理

鴨のロースト

 

ブルゴーニュ産などのピノ・ノワールには、スパイスや鉄のニュアンスが感じられます。

 

それゆえ、鴨や仔鳩、ジビエ料理などとも大変相性が良くおすすめです。

 

 

以上のように、ピノ・ノワールは味付けや触感が繊細な料理に合わせたいブドウ品種です。

 

特に和食好きのあなたは、ぜひ積極的にピノ・ノワールを選んでみてください。

 

 

ピノ・ノワールの新しい魅力

 

上述の通り、ピノ・ノワールはブドウの品質がワインにストレートに表れます。

 

他の品種とブレンドもしないため、ごまかしも利きません。

 

それゆえ、ブドウの生育環境が合わなかったり、栽培で手を抜いたりすると簡単にワインの品質は下がってしまいます。

 

もともと繊細な味のブドウだけに、品質の差は飲み手にも明確に感じられます。

 

それでも、ピノ・ノワールに魅せられ、その気難しい品種の栽培にあえて挑戦する生産者は世界中で増えています。

 

そして、その土地独自の個性をもつ魅力的なワインが世界中で造られています。

 

個人的にはこのようなワインがもっと脚光を浴びて、市場もどんどん変化していくことを期待しています。

 

クラシックな産地の名品は間違いなく魅力的ですが、ぜひあなたも新たな発見と感動を求めて新しい産地のピノ・ノワールも試してみてはいかがでしょうか。

 

参考

・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours  / Jancis Robinson

・日本ソムリエ協会教本 2020

 

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