最終更新日:2021/03/09
カベルネソーヴィニヨンやメルローなどと並んで人気のシラー。
シラーズとも呼ばれ、今やスーパーでも必ず目にするブドウ品種です。
この記事では、シラー (シラーズ)の特徴や生産地、相性の良い料理など知っておくとより楽しめる基礎知識をご紹介します。
Contents
シラーは、フランス・ローヌ地方北部が原産地の黒ブドウ品種で、18世紀後半には現地で栽培が確認されています。
シラーの起源に関しては、シリアやイラン、エジプトという説もありますが、DNA鑑定の結果から否定的な意見が有力です。
また、近年のDNA鑑定によりシラーは「モンドゥーズ ブランシュ(Mondeuse Blanche)」と「デュレーザ(Dureza)」との自然交配であることが判明しています。そのことから、シラーはピノノワールの近い子孫であったり、ヴィオニエと血筋が近い関係にあることも判っています。
シラーは、フランス・ローヌ北部では「セリーヌ(Sérine)」、オーストラリアでは「シラーズ(Shiraz)」とも呼ばれます。
シラー(Syrah)の語源は、ラテン語の「serus(遅い)」(つまり晩熟)に由来すると言われています。
暑さや乾燥、強風に強く、現在はフランスだけでなくオーストラリアを始め世界中で栽培されています。
シラーは、酸とタンニンが強い性質から、茎や種までしっかり熟す温暖な気候が適しています。
シラーワインは基本的に、色が濃くアルコール度数やタンニンが高い力強さが特徴の赤ワインです。
しかし、産地によってワインの特徴も変化し、スタイルにも幅があります。
・色の濃度は非常に濃い
・紫を帯びた赤が基本色
ブドウは小粒で色も濃いため、ワインの色も他品種よりも濃い傾向があります。
また、紫の色調が強いのも特徴です。
他の品種に比べて熟成による色調の変化は遅めです。
・黒果実(ブラックベリー、ブラックチェリー、カシス)
・スパイス (黒胡椒、シナモン、甘草)
・肉 ・鉄 ・ハーブ
香りのベースには、熟したカシスやブラックチェリーのような濃いフルーツ香があります。
さらにスパイスの香りを強く感じる点がシラーの特徴です。
スパイスの香りは、産地によって違いがあり、北ローヌ地方を始めフランスやヨーロッパのシラーは、黒胡椒系の香りが強く感じられます。
一方で、オースラリアのシラーズなどより温暖な産地のものは、シナモンやカカオなど甘いスパイスの香りが主体になります。
さらに、産地によってスパイス以外の香りにも違いがあります。
フランス・ローヌ地方のシラーは、肉や鉄、ベーコン、なめし革のような動物的で野性的なニュアンスが感じられやすい傾向があります。
一方で、オーストラリアなどニューワールドのシラーズなどは野性的なニュアンスは穏やかで、より甘くフルーティな香りが前面に感じられます。
また、オーストラリア産はメントールやユーカリの香りを感じることもあります
・アルコール度は高め
・酸味と渋みが強く、骨格のしっかりした味わい
シラーワインの味わいは、基本的に力強いパワフルな印象です。
特に、味のバランス的に酸味と渋みが強く感じられるのが特徴です。
それによって、濃いだけでなく上品さも併せ持っているところがシラーの魅力です。
ワインのスタイルにも幅があり、アルコリックで濃厚なものもあれば、まるでピノノワールのような繊細なスタイルのものもあります。
シラー (シラーズ)は、世界中で栽培されていて、現在もその栽培面積は拡大しています。
上でもご紹介したように、各産地によってワインのスタイルもさまざまで大変魅力的です。
ここでは、数ある産地の中からフランスとオーストラリアについてより細かく解説します。
シラーの原産地であり、最も高貴なシラーを産出する土地とされています。
北ローヌの赤ワインの多くは、シラー100%で造られますが、村によって最大10~20%まで白ブドウ品種(ヴィオニエ・マルサンヌ・ルーサンヌ)のブレンドが可能です。
この地域のシラーワインは、香りに明確な黒胡椒や動物的なニュアンスがあり、野性的な印象も感じられます。
一方で味わいには、タニックでパワフルでありながらも綺麗な酸味が同居し、多くのワインがエレガントです。
特に「コート・ロティ」「エルミタージュ」村のシラーは、より格が高く、長期熟成によってさらなる真価が発揮されます。
ほぼシラー単一品種のローヌ北部のワインとは違い、ローヌ南部や地中海沿岸地域では主に他の品種とブレンドしてワインが造られます。
シラーとブレンドされる品種には、グルナッシュ、ムールヴェードル、カリニャンなどが使われます。
ブレンドにおいてシラーは、香りにスパイシーさ、味わいに酸とタンニンの骨格を与え、全体にエレガントさをもたらします。
この地域で最も格の高い村は「シャトーヌフ・デュ・パプ」で、長期熟成で魅力を増す偉大なワインが造られています。
また、ラングドック・ルーション地方のシラーワインは、香りにも味わいにも凝縮感があり、ブレンドによってバランスよく仕上げられ、コストパフォーマンスにも大変優れています。
上述の通り、オーストラリアではシラーズと呼ばれ、その味わいも大変魅力的です。
オーストラリアのシラーズで特に有名な産地は、南オーストラリア州の「バロッサ・ヴァレー」です。
ペンフォールドをはじめシラーズを主力にする規模さまざまな生産者が集積しており、「シラーズの首都」とも呼ばれます。
ワインのスタイルはフランスと違い、黒胡椒系の香りは穏やかで果実や樽の印象がより前面に出たスタイルです。
香りにはコーヒーやチョコレート、味わいには熟した柔らかいタンニンを感じる濃厚さが特徴です。
また、それ以外の産地にも魅了的なワインがたくさんがあります。
ヴィクトリア州のようなより冷涼な産地では、小規模生産者による高品質でエレガントなスタイルのシラーズも造られ、注目を集めています。
オーストラリアは広大なだけに、気候や土壌などテロワールは多様。
シラーズのスタイルも幅が広く魅力的です。
現地ではシラーズしか飲まないワイン愛好家も多いようです。
シラー (シラーズ)のワインはパワフルでありながら、濃すぎずバランスの良いワインが多いため、料理にも広く合わせられます。
シラー のワインを合わせる上で一番キーワードは「スパイス」でしょう。
上述の通り、スパイスと言っても、黒胡椒の強いシラーもあれば甘いシナモン系の強いシラーもあります。
これらスパイスがアクセントとして合う料理が特におすすめです。
例えば、以下のような料理が挙げられます。
ジビエ料理には黒胡椒などスパイスを効かせたソースが多く使われるため、シラーと大変良く合います。
また、ローヌ北部などのシラーには鉄や動物的なニュアンスが出やすいため、鴨など鉄分を多く感じる肉料理もおすすめです。
南仏やニューワールドのカジュアルでバランスの取れたシラー(シラーズ)には、芳ばしく焼き上げたバーベキューもよく合います。
樽由来のスモーキーな香りと同調します。
胡椒を効かせたり、甘辛ソースとともに。
肉は、胡椒やハーブと相性の良い仔羊もおすすめです。
シラーの魅力を楽しむポイントのひとつに「熟成」があります。
特に、ローヌ北部の「エルミタージュ」「コート・ロティ」やローヌ南部の「シャトー・ヌフ・デュ・パプ」は長期熟成してこそ真価が感じられるところがあります。
シラー種のワインを熟成させると、鉄やスパイスのニュアンスも果実の香りに溶け込み、より複雑で魅惑的に変化します。
味わいもがっしりした印象から角が取れてしなやかで滑らかに感じられます。
熟成を重ねるにつれてピノ・ノワールのようなエレガントさが増し、シラーがピノ・ノワールの血を引くことがよく理解できます。
このように、産地や熟成によってさまざまな顔を見せるシラーの魅力をあなたもぜひ探ってみてください。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020