最終更新日:2021/03/09
この記事では、サンジョヴェーゼ(Sangiovese)の特徴や生産地、料理との相性など知っているとより楽しめる情報を解説します。
サンジョヴェーゼは、イタリアのトスカーナ地方で長い歴史を持ち、過去の記録から16世紀にはその存在が確認されています。
サンジョヴェーゼ(Sangiovese)の名前は「Sanguis Jovis(ジュピターの血)」に由来するという説があります。
サンジョヴェーゼはDNA解析によって、チリエジョーロ(Ciliegiolo)とカラブレーゼ・ディ・モンテヌオーヴォ(Calabrese di Montenuovo)の自然交配で誕生したと推測されています。
ちなみに、カラブレーゼ・モンテヌオーヴォというブドウは南イタリア・カラブリア州を起源にもつとされ、そのカラブリア州でサンジョヴェーゼも古くから栽培が確認されています。このことからサンジョヴェーゼは、カラブリアで誕生し、トスカーナに伝わったという説もあります。
サンジョヴェーゼは突然変異が起こりやすいブドウ品種のため、多くのクローンが存在します。
それらは現在も完全には把握されておらず、実際の畑では特性の異なる複数のクローンがひとつのサンジョヴェーゼとして混植されているとも言われています。
しかしそんな中でも、サンジョヴェーゼには大きく次の2つのグループが存在します。
サンジョヴェーゼ・グロッソ(Sangiovese Grosso)
粒が大きく果皮が厚い特徴があり、土地によって「ブルネッロ(Brunello」「プルニョーロ・ジェンティーレ(Prugnolo Gentile)」などとも呼ばれます。
サンジョヴェーゼ・ピッコロ(Sangiovese Piccolo)
粒の小さいサンジョヴェーゼです。
一般的にサンジョヴェーゼ・グロッソの方が品質が上と見られがちですが、クローンや土地、収量によってブドウの質は大きく変わるため、実際は粒のサイズがそのまま質に繋がるわけでもありません。
ブドウの生育は晩熟です。
乾燥に強く収量も安定しており土地への適応性も高いブドウ品種です。特に石灰岩を含む土壌で強い香味が生まれるとされています。
クローンが多く特性に幅がありますが、共通して酸が強めの傾向があります。
・中程度からやや濃いめの濃度
・紫よりも赤い色合いが強い
ワインの色調は生産者のスタイルのよって開きがあります。
・ブラックチェリー、プラム、梅
・ドライイチジク ・黒オリーブ
・鉄 ・ロースト、ヴァニラ、丁子
凝縮したチェリーやドライフルーツの香りに梅のような酸を思わせるニュアンスも感じられます。
樽熟成のワインにはスモークやスパイスの香りも強く表れます。
・中程度のアルコールと果実味
・やや高めの酸味
・滑らかなタンニン
凝縮度やタンニンの量は差がありますが、濃すぎずバランスの取れたフレッシュな味わいが多くのワインで感じられます。
サンジョヴェーゼの全生産量の大半はイタリア中部に集中していますが、フランス・コルシカ島でも主要品種として栽培されています。また、アルゼンチン、アメリカ、オーストラリアなどでも少量栽培されています。
イタリア中部のトスカーナ州は、最も質の高いサンジョヴェーゼの産地です。
有名なワインには「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)」「キアンティ(Chianti)」などがあります。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、シエナの南に位置するモンタルチーノ村周辺のサンジョヴェーゼ(グロッソ) 100%で造られる最上級のワインです。
長期熟成能力も高く、法律で4年以上の熟成が義務付けらています。
ブルネッロは、凝縮した複雑な香味で力強さとエレガントさを併せ持ち、贈答品にも選ばれる高級ワインとして世界的に人気があります。
キアンティは、サンジョヴェーゼ主体の最も有名なワインです。産地は広範囲に渡り、土地や生産者によってスタイルの幅が広いのも特徴と言えます。一般的にキアンティワインは、フレッシュでバランスの取れた味わいが感じられます。
キアンティ・クラッシコ(Chianti Classico)は、キアンティの中でもフィレンツェとシエナの間に広がるより限られたエリアで造られています。キアンティより骨格のしっかりした上質なワインが多く生産されています。
フランスのコルシカ島は、かつてはイタリアの都市国家に支配されていた時代が長く、サンジョヴェーゼも18世紀にジェノバから伝わったと言われています。
コルシカでサンジョヴェーゼは「ニエルッチョ(Nielluccio)」と呼ばれ、特に「パトリモニオ(Patrimonio)」など北部でニエルッチョ主体のワインが生産されています。
サンジョヴェーゼのワインはフレッシュでバランスの良いワインが多いため、家庭料理にも広く合わせられます。
特にイタリア中部でよく食される、生ハムやサラミなどの腸詰、ラザニア、ボロネーゼやトマトソースのパスタやピザ、Tボーンや仔羊のステーキ、ペコリーノチーズなどは間違いありません。
香りに和のニュアンスを感じるワインも多く、特に醤油系の味付けの料理によく合います。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020