最終更新日:2019/10/17
ワインの試飲会などに行くとテイスティングしながら
「このワイン、還元臭がするね」
なんて言葉が交わされることがあります。
あなたはこの還元臭がどのようなにおいなのかわかりますか?
そこですこし還元臭について学んでみましょう。
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還元臭は一般的に、ゆで卵やキャベツ、ニンニク、玉ねぎ、ゴムのような硫黄系のにおいと言われています。
かつてはビオ臭とも呼ばれていました。
これは、亜硫酸無添加など自然派ワインによく表れるにおいだったからです(近年はそのような自然派ワインは少なくなった)。
還元臭と呼ばれる硫黄系のにおいは、強く感じるとワインの欠陥臭とみなされますが、微量であれば逆に香りに複雑性をもたらす香りになります。
例えば、火打石や鉄、ヨード、ペトロ―ル(重油香)などのワインに爽やかさや骨格を与える鉱物的な香りも還元状態で生じる香りの一種と言われています。
還元臭は軽度のものであればワインを空気に触れさせて酸化させることで消すことができます。
還元臭の原因は、硫化水素やメルカプタン(チオール)などの硫黄化合物と言われています。
還元臭の原因物質である硫黄化合物が生成されやすくなるのは次のような場合です。
1.還元的な環境で醸造、熟成した場合
2.ブドウ果汁中に窒素が少ない場合
1.還元的な環境で醸造、熟成した場合
還元的な環境とは、酸素が不足した状態です。
主に次のような場合に還元状態になりやすくなります。
ステンレスタンクを使うなど、醸造中に極力ワインを酸素に触れさせない嫌気的な造り
還元物質である澱が多い状態
抗酸化作用のあるポリフェノールやタンニンが多い状態
スクリューキャップなど酸素の透過が少ない栓で瓶詰めされた場合
このようにしてワインが還元状態になると液中にある硫黄イオンが還元され硫化水素が生成されます。
また、酸化防止剤無添加のワインに還元臭が多かったのは、酸化防止剤を入れない分、酸化を避ける醸造過程で極度の還元状態になってしまったためです。
2.ブドウ果汁中に窒素が少ない場合
果汁中の窒素量が不足している場合、酵母が硫化水素を生み出すと言われています。
このブドウに含まれる窒素量はブドウ品種や生育環境によって変わります。
以上のような原因で生じてしまう硫黄化合物は、通常は醸造過程で温度管理や添加物を加えるなど様々な処置によって調整されています。しかし、酸化還元の調整がうまくいかないと結果的に還元臭を引き起こすことになるんです。
ワインの還元臭の元である硫黄化合物は、強すぎると不快で欠陥臭となりますが、微量であればワインをより魅力的に感じさせる香りとなります。
心地よい香りだけでなく不快な香りも組み合わせる香水の調合と同じですね。
その香りのバランスがワインの個性となり、そのセンスがワイン醸造家に問われるところでもあるのでしょう。
参考文献
The Oxford Compapnion To Wine /Jaicis Robinson
株式会社Firadis ニュースレター 『ワインの欠陥(オフ・フレーヴァー)』