最終更新日:2021/03/11
フェノレ(Phénolé)は、フランス語で「フェノール性」を意味し、揮発性フェノールによるフェノール系のオフフレーバーを指す言葉です。
ワインに生まれるフェノレの原因物質は次の通りです。
① 4-ヴィニルフェノール:薬箱、絆創膏、絵具、生ごみ
② 4-ヴィニルグアイアコール:カーネーションの胡椒系ニュアンス
③ 4-エチルフェノール:馬小屋、獣
④ 4-エチルグアイアコール:クローヴなどのスパイス
①②は白ワインのフェノレ、③④は赤ワインのフェノレと言われています。
①②のヴィニルフェノール類は、ブドウに含まれるpクマル酸とフェルラ酸というポリフェノール(ケイ皮酸類)がワインの発酵酵母「サッカロマイセス・セルビシエ」がもつ酵素によって代謝され生成されます。
それゆえ、白ワインではポリフェノールの多い甲州種などでフェノレが生じやすい傾向があります。防止策として、ケイ皮酸類を代謝する酵素を持たない酵母の選択が挙げられます。
③④のエチルフェノール類は、ブレタノマイセスという野生酵母によって生じます。
ブドウに含まれるケイ皮酸類(pクマル酸とフェルラ酸) がブレタノマイセス酵母がもつ酵素によって代謝されて①②が生成され、さらにブレタノマイセスの別の酵素によってそれらが代謝され③④が生成されます。
③④のエチルフェノール類は、特に樽熟成中に汚染が起きやすく、樽熟成期間が長い赤ワインや亜硫酸無添加、pHが高い(酸が低い)ワインなどで確認されます。
白ワインは、製造において樽熟成期間が短く、低温管理や早い段階での亜硫酸添加、低いpHなどブレタノマイセスが増殖しにくい環境であるためエチルフェノール類のフェノレが感じられることは稀です。
フェノレは、他のオフフレーバーに比べて不快に感じる人は少なく、少量であればワインの香りに複雑さを与えます。
参考
・国産ワインにおけるフェノール系オフフレーバー「フェノレ」について/恩田匠 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/108/12/108_881/_pdf)
・ワインの香り / 東原和成・佐々木佳津子・渡辺直樹・鹿取みゆき・大越基裕