最終更新日:2019/10/24
ワインの専門用語で、澱(オリ)という言葉があります。
澱とは、ワインの底に沈む沈殿物のことです。
一度見ればすぐ理解できますが、そうでないと何のことだかわかりません。
この記事では、澱の正体から、澱の多いワインの見極め方や澱の扱い方をご紹介します。
澱(オリ)とは、写真のようなワインに沈む沈殿物のことです。
澱とは、ブドウに含まれるペクチンやポリフェノール、酒石酸、たんぱく質、酵母などが結合した混合物です。
赤ワインの澱は、主にタンニンなどポリフェノールが結合したもので赤黒い色をしています。
白ワインやシャンパンの澱は、ワイン中の酒石酸がカリウムなどのミネラル分と結合したもので、キラキラとしたガラス片のような結晶です。
どちらも食べて毒ではありませんが、決して美味しいものではなく、ワインの風味や食感を損ねるので取り除いて楽しみます。
例えば赤ワインでも澱の多いワインとそうでないワインがあります。
赤ワインの場合、ボトルを透かして見ただけではわかりづらいところがあるのでワインを扱う前にある程度予想しておくことが重要です。
具体的には以下のようなワインには注意が必要です。
澱の一番の正体はタンニンです。
ですので、色が濃く、渋みの強いワインには澱が生じやすい傾向があります。
例えば、ブドウ品種で言うと、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、ネッビオーロなどです。
産地でいうと、フランスのボルドー地方や、ローヌ地方、イタリアのピエモンテ州(バローロなど)のワインは要注意です。
澱は、瓶の中で熟成する過程で結合が進んでいきます。
基本的に熟成の進んだ古いワインに澱が多く含まれています。
目安はワインによりますが、10年程度。10年以上熟成させたワインには確実に澱があるものと考えましょう。
通常、ワインは製造過程の後半に、ワインの透明度を高めるために清澄や濾過を行います。
しかし、この工程を嫌う造り手もいます。
特に醸造で極力人の手を加えないナチュラルな造りをする生産者は、無濾過・無清澄にこだわります。
無濾過・無清澄のワインは、澱の要素が他のワインよりも多いため、当然澱も多く、熟成の浅い若いワインでも澱が生じている場合があります。
それでは、上記のように澱が多いと判断したワインはどのような扱い方をすればよいのでしょうか?
これはワインを楽しむ上でとても重要なのでぜひ頭に入れておいてください。
澱のあるワインを、振ったり揺すったりと大きな振動を与えると澱が舞ってしまいます。
ワインを注いだ時に澱がグラスに入ってしまってはせっかくのワインが台無しです。
特に何十年も熟成させたようなワインをセラーなどから取り出すときは瓶の中のワインがなるべく動かないようにゆっくり扱いましょう。また、そのようなワインを持ち運んだり、大きく動かしたときには、飲む前の最低でも一時間(理想は一週間)はボトルを立てて澱を底に沈ませるようにしましょう。
ワインの澱はボトルの底に溜まっています。
澱があるワインは、普通に注いでいれば最後は澱が混ざったワインが出てきます。
ワインを残すのはもったいない気もしますが、最後まで美味しく楽しむためにはボトルワイン後半の注ぎ方には注意が必要です。
ワインアクセサリーとして、写真のようなボトルを寝かせた状態でボトルを入れるパニエ(かご)があります。
パニエに入れることで、ワインを注ぐ際に注ぎ口の上下の動きを最小限にすることができます。
これによって瓶内のワインの揺れを抑え、澱が舞うのを防いでくれます。
澱が特に多いワインは、デカンタージュするのが王道です。
上で述べたように、ワインを注ぐ時に瓶内でワインが揺れることで澱が舞ってしまう可能性があるからです。
まずは澱が沈んでいる状態でワインをデカンタに移すことが大切です。
また、デカンタージュするときも、ドボドボとデカンタに注ぐのではなく、ゆっくりとワインに衝撃を与えないように注ぎましょう。
古いワインはただでさえ繊細ですので、ちょっとしたダメージで風味が飛んでしまう恐れがあるからです。
以上、ワインの澱について基礎知識と扱い方をご紹介しました。
澱は特に上質なワインには付きものです(質の高いワインは長い熟成を経て真価が表れる面も多いため)。
そして、熟成期間が長くなればなるほど、澱は生じやすく、その扱い方に注意が必要になってきます。
でも、上記のような澱の扱い方を知っていれば決して熟成ワインを恐れることはありません。
ぜひ積極的にそういったワインを試してみて、自分に合った澱との付き合い方を見つけてみてください。
扱い方をしっかり把握して最大限にワインを楽しむことができれば、あなたのワインライフはさらに深く充実したものになるはずです。