最終更新日:2021/03/09
この記事では、甲州の特徴や生産地、料理との相性など知っているとより楽しめる情報を解説します。
甲州の起源については伝説はあるものの確かな記録は確認されていません。
しかし、2013年にDNA解析によって、甲州には欧・中東系品種「ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis Vinifera)」に中国の野生種「ヴィティス・ダヴィーディ(Vitis Davidii)」のDNAが含まれていることが明らかになりました。
これによって、甲州は「カスピ海付近で生まれた品種が中国に渡り、中国の野生種との交雑を経て日本に伝わった」という説が生まれています。
歴史的には、甲州は1600年頃までは甲斐国(山梨県)で少量植えられる程度でした。
1620年代に甲斐の永田徳本によって棚づくりによる栽培方法が考案され栽培が広がったとされています。
その後、山梨県を中心に甲州の栽培が進み、明治・大正時代には島根県、広島県、徳島県、石川県などで甲州栽培が試みられました。
しかし、昭和初期以降は山梨県以外で甲州の栽培は進まず、現在の甲州の栽培地は山梨県に集中しています。
2010年には甲州が「国際ぶどう・ぶどう酒機構(O.I.V.)」のリストに登録され、国際的に広く知られる品種になりました。
房や粒は大きく、ピンク色を帯びた厚い果皮を持ちます。その果皮からのフェノール類がワインに特徴的な渋苦味を与えます。
ブドウの生育は晩熟で糖度が上昇しにくいとされています。
樹勢が強く、栽培は基本的に棚仕立てで行われています。
甲州は香味は穏やかでコンパクトながらバランスに優れたワインを生みます。
また、収穫を早めて香り成分を高めたものや、醸造を工夫して味に厚みを持たもの、樽熟成による香味を加えたもの、果皮成分の抽出を強めたものなどワインのスタイルには幅があります。
透明に近いものから果皮と醸したオレンジワインまであります。
甲州は果皮が赤いブドウであるため、ワインの色調は明るくてもややグレーやゴールドのニュアンスが見られます。
・レモン、グレープフルーツ、リンゴ、白桃、メロン
・白い花 ・ヨード、石灰
・イースト
フルーツは柑橘やリンゴを中心としたアロマがありますが、香りの量はそれほど強くありません。
お花やフレッシュハーブのような爽やかなニュアンスも感じられます。
品種の個性は少なく、製法によって、ミネラリーな香りやシュール・リーによるイースト系の香り、樽熟成によるヴァニラやスパイスが重なります。
・軽めのボディでバランスの取れた味わい
・柔らかく比較的穏やかな酸味
・滑らかでやや厚みもありつつ軽く収斂する触感
・余韻に残る渋苦味
全体的に、甲州ワインは穏やかで繊細な味わいが感じられます。
その中でもスッキリ仕上げたタイプや樽熟成で広がりを持たせたタイプ、オレンジワインのようなコクの強いタイプなど幅があります。
共通する特徴として、ブドウの果皮からくるタンニンの渋苦味が感じられます。
甲州の生産地は、ほぼ日本に集中しています (ドイツ・ラインガウでも少量栽培されています)。
日本国内で甲州はワイン原料用国産生ブドウの16%を占め、日本で最も多く生産されているワイン用ブドウ品種です。
そして、そのうちの96%以上は山梨県が占めており、次いで島根県、山形県と続きます(2018年国税庁データ)。
山梨県における甲州の主産地は甲府盆地東部で約7割のワイナリーが集まっています。
特に甲州ブドウ発祥の地とも言われる甲州市勝沼町では甲州ブドウが集中的に栽培されています。
ワインのスタイルは上述の通り多様で、情熱的な生産者や研究者によって品質も年々進化しています。
甲州ワインを選ぶならやはり和食がおすすめです。
繊細で優しい甲州の味わいには、精細な味付けの料理が合います。
甲州特有の旨苦味は根菜のえぐみや天ぷらやおでんのダシにも調和します。
また、甲州は他の品種のワインよりも鉄分が少なく魚の生臭みが出にくい特徴があります。ですので、刺身など生魚にもぜひ合わせてみてください。
肉なら鶏肉をシンプルな味付けで柚子胡椒などの和柑橘を効かせるとワインの柑橘フレーバーにも同調しマッチします。
また、樽を効かせたタイプにはグリルやクリーミーなソース、オレンジワインには中華やエスニックなどワインのスタイルによって合わせる料理の幅も広がります。
甲州はワインの品質の向上やスタイルの多様化とともに一層日本の食卓に馴染む品種へと進化しています。
参考
・日本ソムリエ協会教本 2020
・国内製造ワインの概況(平成30年度調査分)/国税庁