最終更新日:2021/03/09
グルナッシュは、南仏やスペインなど地中海沿岸で主に栽培されているブドウ品種です。
この地域のワインを理解する上でグルナッシュはぜひとも知っておきたいところ。
この記事では、グルナッシュの特徴や産地、料理との相性など品種の魅力をご紹介します。
Contents
グルナッシュはスペイン・カタルーニャ州「アラゴン」が原産地と言われています (イタリアの「サルデーニャ島」という説もあります)。
かつては、スペインで「Aragones」と呼ばれており、16世紀には現地で栽培されていたとされます(最古の記録は1513年)。
国際的には、フランス語のGrenache(グルナッシュ)と呼ばれますが、原産国スペインではGarnacha(ガルナッチャ)、イタリア・サルデーニャではCannonau(カンノナウ)として知られています。
グルナッシュは、スペインでの長い栽培の歴史の中で突然変異が起こり、果皮が白や灰色のクローンも誕生しています。
現在それらは、Grenache Blanc(グルナッシュ・ブラン)、Grenahe Gris(グルナッシュ・グリ)という名で区別され、多くのワインに使われています。
それゆえ、黒ブドウのグルナッシュは正確にはGrenache Noir(グルナッシュ・ノワール)と呼ばれます。
グルナッシュは熱や乾燥に強く、世界でも生産量の多いブドウ品種です。
開花からゆっくりと実を熟す晩熟型で、特に温暖な気候が適しています。
良質なグルナッシュを収穫するには、収量を抑えて適した環境でゆっくり成熟させる必要があります。
グルナッシュは通常の垣根仕立てだとブドウの収量が多くなり過ぎるため、ゴブレ仕立て(株仕立て)という低収量で機械での作業が難しい仕立てで栽培します(下の写真)。
そのため、機械での畑作業が主のニューワールドではグルナッシュの栽培は比較的少なく、産地は、スペイン、フランス南部、イタリア・サルデーニャなど地中海周辺が中心です。
グルナッシュは、赤ワインの他にロゼワインの原料としても多く使用されています。
グルナッシュワインの特徴は、熱を加えたベリーやチェリーの甘い香り、凝縮した果実味とアルコール感です。
・濃いめの色調
・熟成によりオレンジの色味が早い段階で出やすい
平均的に中程度からやや濃いめの色調です。
乾燥した環境で収量を抑えた成熟度の高いものほど濃くなります。
酸が比較的少なく酸化熟成しやすいため、オレンジの色調が早い段階で見られます。
・黒果実 (ブラックベリー、ブラックチェリー、プラム)
・ジャム (イチゴ、グリオットチェリー) ・イチジク
・スパイス (リコリス、シナモン、生姜、漢方)
・ドライハーブ
グルナッシュのフルーツの香りにはリキュールやジャムなどの甘い凝縮したニュアンスを強く感じます。
スパイスの印象は、胡椒系の香りではなく、リコリスなど甘苦系スパイスの香りが主体です。
上質なグルナッシュからは、スパイスに加え鉱物的なミネラルのニュアンスが感じ取れます。
・アルコール度数は高く、甘みを感じる豊かな味わい
・酸味は比較的穏やか
・タンニンは豊富だが、質感は柔らかく滑らか
グルナッシュのワインは、アルコールが高めの傾向はありますが、酸味や渋みは穏やかで甘みが感じられやすく、ワインを飲み慣れない人にも大変好まれる味わいです。
上質なグルナッシュの中には、熟成を経るとピノノワールのような柔らかさと軽やかさ上品さを感じるものもあります。
グルナッシュは主に地中海地方で多く栽培されていますが、その主産地としてスペインと南フランスについてより詳しく解説します。
グルナッシュの原産国とされるスペインでは「ガルナッチャ」と呼ばれています。
スペインでガルナッチャは多く栽培され、黒ブドウでは「テンプラニーリョ」に次いで2番目の生産量です。
特にスペイン北東部のアラゴン州で多く栽培されていますが、北西部や南部を除いてスペインの広い範囲で栽培されています。
ワインは、他国よりもガルナッチャ単一で仕上げたワインも多く見られます。
ブレンドでは、カリニェナ、テンプラニーリョなどの同じスペイン原産ブドウの他、カベルネソーヴィニヨンなど外来種がブレンドされる例も増えています。
ワインの味わいは伝統的なアルコールの高い凝縮したスタイルが多いですが、近年は外来種をブレンドしてより洗練されたスタイルに仕上げたワインも多く見られます。
スペイン同様に、南フランスでもグルナッシュは広く栽培されています。
南ローヌ地方、プロヴァンス地方、ラングドック・ルーション地方が主産地です。
この地域のグルナッシュワインは多くの場合、シラーやムールヴェードルなどの他品種とブレンドされます。
そのことからスパイシーでバランスの取れたワインが多いですが、グルナッシュの比率が高いほど甘い果実の印象とアルコール感の強い膨らみのあるスタイルになります。
この地域のワインで特に有名かつ格の高いワインがローヌ南部の「シャトーヌフ・デュ・パプ」村のワインです。
この村名のワインは、グルナッシュのほかに最大13品種のブドウをブレンドすることが許されています。
長期熟成型で力強く複雑なアロマと深い味わいで多くのファンを魅了しています。
グルナッシュを使った特殊な甘口ワインも有名です。
フランスのスペインとの国境に位置するルーション地方では、グルナッシュ主体の「ヴァン・ドゥー・ナチュレル」という天然甘口ワインが生産されています。
ヴァン・ドゥー・ナチュレルとは、ワイン発酵中にアルコールを添加し、酵母の働きを停止させることで天然の糖分を残したワインです。
「Banyuls(バニュルス)」「Maury(モーリー)」村のものは世界でも最高品質で、チョコレートとの相性も抜群。有名ショコラティエで見かけることも多いです。
グルナッシュのワインは、ふくよかで柔らかい濃厚な果実味たっぷりの赤ワインです。
例えば以下のような料理との相性がおすすめです。
グルナッシュの柔らかいタンニンと果実味たっぷりの味わいに合わせて、甘い脂身と繊細な肉質の豚や仔羊料理は好相性です。
南仏赤ワインのようにスパイシーなシラー種がブレンドされたワインには、特に仔羊がよく合います。
グルナッシュの柔らかさに調和するように、素材を柔らかく仕上げた温かい煮込み料理もおすすめです。
グルナッシュ主体の柔らかく甘やかなワインにはチーズもおすすめです。
ブラックチェリー風味の凝縮した果実味とよく合います。
特に、「ロックフォール」のような柔らかい口溶けの濃厚なブルーチーズや「マンチェゴ」「オッソーイラティ」のような豊かなコクの羊乳製チーズはベストマッチです。
バニュルスなどの甘口のグルナッシュとチョコレートとの相性もおすすめです。
以上のように、グルナッシュは、ふくよかで凝縮感がありながら丸みのあるワインを生みます。
まさに熱い産地を思わせる味わいです。
グルナッシュワインは、シャトーヌフデュパプのような偉大なワインもある一方で、よりカジュアルでバランスよくブレンドされたコストパフォーマンスに優れたワインも多く、バーベキューや普段飲みのワインとしても適しています。
特に濃いめの赤ワインがお好きな人にはぜひおすすめしたいブドウ品種です。
ぜひ日常の食卓にグルナッシュのワインを積極的に取り込んでその魅力をご堪能ください。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020