最終更新日:2021/03/09
この記事では、ゲヴュルツトラミネール (Gewürztraminer)の特徴や生産地、料理との相性など知っているとより楽しめる情報を解説します。
ゲヴュルツトラミネールは、サヴァニャン・ローズ(Savagnin Rose)種の突然変異種と推測されています。
ゲヴュルツトラミネールは、果皮が赤い点でサヴァニャン・ローズと同じ特徴を持ちますが、より強く華やかな香りを有するのが特徴です。
そして、サヴァニャン・ローズは、サヴァニャン(フランス・ジュラ地方やスイス・ヴァレー州で主に栽培されている白ブドウ品種) の果皮が赤く変色した突然変異種です。
つまり誕生にあたって以下のような突然変異が起こっています。
ちなみに、サヴァニャン・ローズで造られるワインには、フランス・アルザス地方の地理的名称「クレヴネール・ド・エイリゲンシュタイン(Klevner de Heilligenstein)」がありますが、栽培面積は少なく、ヨーロッパの多くの国ではサヴァニャン・ローズとゲヴュルツトラミネールは同一として統計されています。
ゲヴュルツトラミネールの起源は、かつては北イタリアの南チロルという説が主流でしたが、ドイツのワイン歴史家Christine Krämer氏が膨大な調査からこの説を否定しており、世界的なワイン評論家JancisRobinson氏も自著でこの説を支持しています。
これら専門家は、ゲヴュルツトラミネールの起源は、サヴァニャンの起源とされるフランス北東部やドイツ南西部であると主張しています。
「ゲヴュルツ(Gewürz)」はドイツ語で「スパイス」を意味します。
「トラミナー(Traminer)」はドイツでサヴァニャン種を指すことから、スパイシーな香り高いサヴァニャン種を差別化した名前と考えられます。
上述の通りゲヴュルツトラミネールは赤みの強いの果皮(グリ)を持ちますが、白ワイン用のブドウ品種です。
生育は早熟で霜害のリスクも高く、結実不良も起こしやすい栽培の難しい特性もあります。
上述のサヴァニャンやサヴァニャン・ローズとほぼ同じ遺伝子を持ちますが、これらよりも高い芳香性を備えています。
ゲヴュルツトラミネールのワインは、アロマチックで甘みを感じるほど豊かな果実味が特徴です。
・濃いイエロー
・強めの粘性
多くのワインは凝縮感が強く、濃い色調と強めの粘性が見られます。
・トロピカルフルーツ (ライチ、桃)
・花 (白いバラ、ユリ)
・スパイス (白檀、白胡椒、コリアンダー)
ライチや桃のような甘いフルーツや花の香りが明確に感じられます。
さらに、鼻をくすぐるようなスパイスのニュアンスも特徴です。
・凝縮感があり触感からも粘性の強さを感じる
・甘みが表れやすい
・穏やかな酸味
・強めの苦味と長い余韻
ゲヴュルツトラミネールのワインは、厚みのある凝縮度の高さが感じられます。
他の品種よりも甘みを感じるワインが多いのも特徴です。
酸味は穏やかでリッチでふくよかな味わいです。
後半から余韻にかけては苦味と生姜飴を思わせるようなスパイシーなフレーバーがワインに力強さを与えます。
ゲヴュルツトラミネールは、フランスのアルザス地方を中心に世界中で栽培されています。
アルザス地方では、ゲヴュルツトラミネールは高貴品種のひとつとして多く栽培され、その栽培面積はアルザス全体の約20%を占めます。
また、アルザス地方には51のグラン・クリュ(特級畑)が存在し、その多くの畑でゲヴュルツトラミネールは栽培されています。
ワインの味わいは、全体的にアルコールや香味の凝縮度が高く、上品でありながら厚みと力強さも感じられます。
多くのワインに甘みが感じられ、甘口ワインも多く生産されています。
特に「ヴァンダンジュ・タルディヴ(Vendanges Tardives)」など一定の条件を満たした遅摘みのブドウで造る上質な甘口ワインは大変人気です。
フランスと同様に栽培の長い歴史をもつドイツでは、ライン川周辺のファルツ(Pfalz)、バーデン(Baden)、ラインヘッセン(Rheinhessen)で主に栽培されています。しかし、栽培面積はフランスの1/3以下でそれほど多くありません。
イタリアでも栽培は多くありませんが、最北部アルト・アディジェ州が主産地です。ゲヴュルツトラミネールはイタリアでは「トラミネール・アロマティコ(Traminer Aromatico)」と呼ばれています。
その他、ハンガリーやチェコなど主に中央ヨーロッパで多く栽培されています。
また、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドなどヨーロッパ以外でも冷涼な土地を中心に栽培されています。
ゲヴュルツトラミネールのワインは、香味に個性があるため料理をやや選ぶワインとも言えます。
味わいには甘みが出やすく濃厚なワインが多いため、合わせる料理も味わいがしっかりしたものが適しています。
特に肉前菜との相性はおすすめです。
豚肉、鶏肉、フォアグラを使ったパテや腸詰はよく合い、ワインの華やかでスパイシーな風味が食材の臭みも消してくれます。
また、アルザス産のマンステールなどのクセの強いウォッシュチーズにもおすすめです。
さらに、香草やスパイスが効いた料理ともよく合います。
香菜を使ったベトナム料理やタイ料理、スパイシーな中華料理、カレーなどインド系料理にもおすすめです。
また、ゲヴュルツトラミネールのワインは、白ワインの中では赤身の魚にも合わせやすい特徴があります。
ワインに感じるスパイスや生姜、香菜を料理のアクセントに利かせると一層相性は高まります。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020