最終更新日:2021/03/09
この記事ではガメイ (Gamay)の特徴や生産地、料理との相性など知っているとより楽しめる情報を解説します。
ガメイは、フランス・ブルゴーニュ地方原産の黒ブドウ品種です。
ガメイは、ブルゴーニュで古くから栽培されているブドウ品種で、その誕生は14世紀より前と推測されています。
現在とは違い、かつてはブルゴーニュの広い範囲に植えられていました。
しかし、1395年に当時ブルゴーニュを治めていたフィリップ公が、ガメイの栽培を禁止するよう命じたことでコート・ドールのガメイはほとんど引き抜かれ、それから現在までガメイはブルゴーニュ南のボージョレ地区を中心に栽培されています。
ガメイの名前は、ブルゴーニュ地方サン・トーバンにある村の名前に由来するという説があります。
この村は現在も存在しています。
ガメイは、「ピノ・ノワール(Pinot Noir)」と「グエ・ブラン(Gouais Blanc)」との自然交配によって誕生しています。
実は、シャルドネ、アリゴテ、ミュスカデなどブルゴーニュ原産の品種も同じ親を持つ兄弟です。
ちなみに、ガメイは正式には「ガメイ・ノワール(Gamay Noir)」や「ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン(Gamay Noir à Jus Blanc)」と言います。「Noir」は黒ブドウ、「à Jus Blanc」は白い果汁であることを意味します。
これは、「ガメイ・ブラン(Gamay Blanc)」というシャルドネの別名(シノニム)があったり、「ガメイ・タンテュリエ・ド・ブーズ(Gamay Teinturier de Bouze)」という赤い果汁の別の品種があるためです。
≪タンテュリエとは≫
タンテュリエ(Teinturier)は、フランス語で「染め物師」のような意味で、名前の通り赤い果肉を持ちワインの着色用に古くからフランスで栽培されていたブドウ品種です。現在、フランスでは栽培されていません。
ガメイ・タンテュリエ・ド・ブーズ(単にガメイ・ド・ブーズとも言う)も同様に赤い果肉を持つブドウ品種です。現在、少量ですがフランスでも栽培されています。この他にも、この品種の突然変異で生まれた「ガメイ・ド・ショードネ(Chaudenay)」「ガメイ・フレオー(Fréaux)」という似た性質の品種もあります。
これら品種はガメイ・ノワールと完全に区別され使用も限られていますが、現在もこれら品種を使ったワインは生産されています。
例えば、リヨン近くのAOC「コトー・デュ・リヨネ(Coteaux du Lyonnais)」ではガメイ・ド・ブーズ、ガメイ・ド・ショードネを合計または単独で10%以下使用することができます。
ガメイは、発芽も生育も早い早熟タイプのブドウです。
特に花崗岩質の土壌が適しているとされています。
実を多く付ける性質があり、特に肥沃な土地や温暖な気候の産地では収量制限が必須です。
ブドウの粒は大きく、色調は明るく味わいも軽やかな傾向があります。
ガメイのワインは、軽やかでジューシーな味わいが特徴です。
・やや明るめの色調
・紫を帯びたルビー
ガメイは基本的に明るめの色調ですが、クリュ・デュ・ボージョレのような凝縮度の高いワインには黒みを帯びるほど濃いものもあります。
ボジョレー・ヌーボーの場合、色調は鮮やかな紫が強く表れ、濃度も濃いめです。
・ラズベリー、イチゴ、ブルーベリー
・スミレ ・鉄
・甘草 ・バナナ、キャンディー
ガメイは、赤系果実の甘い香りが出やすい品種ですが、花崗岩質土壌のガメイからは黒果実や鉄、スイートスパイスのニュアンスも感じられます。
ボジョレー・ヌーボーの場合は、バナナやイチゴキャンディーのようなやや人工的な香りが強く表れます。
・アルコールや凝縮感は中程度
・酸味は比較的穏やか
・タンニンは滑らかなで柔らかい触感
ガメイの味わいは、豊かな果実味がありながら濃すぎ、みずみずしさが感じられます。
柔らかい飲み口のワインが多いですが、中にはモルゴン村のワインのようにタンニン豊かな力強いスタイルのものもあります。
ボジョレー・ヌーボーは、濃い色に反して渋みは少なく、甘いフレーバーたっぷりのチャーミングな味わいです。
ガメイはフランス・ボージョレ地区を中心に、フランス・ロワール地方やサヴォワ地方、スイスでも積極的に栽培されています。
日本人にも馴染みのある「ボジョレー・ヌーボー」はボージョレ地区のガメイで造られた赤ワインです。
ボジョレー・ヌーボーは、収穫したその年に飲みやすく仕上げるために「マセラシオン・カルボニック」という特殊な製法で造られています。
それゆえ、ガメイの本来の個性や魅力を味わうには不向きなワインでもあります。
ボージョレ地区にとってヌーボーは重要な存在ですが、もっと魅力的なガメイ種のワインはたくさん造られています。
ボージョレ地区の中で「クリュ・デュ・ボージョレ(Cru du Beaujolais)」と呼ばれるエリアからはガメイの最高峰とも言えるワインが生産されています。
クリュ・デュ・ボージョレは花崗岩質土壌でガメイの成熟に適した環境を持つことから、ワインはより力強く肉付きや複雑味のあるスタイルになります。
クリュ・デュ・ボージョレのエリアには10の村が存在し、中でも「モルゴン (Morgon)」「ムーラン・ナ・ヴァン (Moulin-à-Vent)」村のワインは特に評価が高く、熟成能力にも優れています。
ブルゴーニュでは、いくつかのAOCでピノ・ノワールとガメイのブレンドが許されています。その多くは、補助品種として少量の使用に制限されています。
しかし中には、ブレンド比率が自由な「コトー・ブルギニヨン(Coteaux Bourguignons)」やガメイ(15%以上)とピノ・ノワール(30%以上)両者のブレンドが義務付けられた「ブルゴーニュ パス・トゥー・グラン(Bourgogne Passe-Tout-Grains)」のようなAOCも存在します。
これらワインも、両者の長所を生かしたバランスの良い味わいとコストパフォーマンスの良さで知名度が上がってきています。
ガメイは、フランスのロワール地方中央部のアンジュー・ソミュール地区やトゥーレーヌ地区でも多く栽培されています。
味わいは、クリュ・デュ・ボージョレに比べると軽やかでチャーミングな傾向があります。
またカベルネ・フランなどに補助品種としてブレンドされることも多くあります。
また、ロワール川の最上流の中央高地地区でもガメイが栽培されています。
質よりも量に重きを置いたワインが多いものの、特に「コート・ロアネーズ(Côte Roannaise)」は花崗岩質土壌でワインのスタイルもボージョレに近く、高く評価されているドメーヌも数件あります。
ガメイのワインは軽やかで柔らかい飲み口が特徴のため、軽めで柔らかい食感の肉料理がおすすめです。
ハムやパテなどの肉前菜はもちろん、クリュ・デュ・ボージョレのような凝縮度が高く、鉄やスパイスのニュアンスがあるタイプにはブルゴーニュの郷土料理の鶏肉の赤ワイン煮込みもおすすめです。また、和や中華の味付けにもよく馴染みます。
酸やタンニンが柔らかいガメイのワインは、チーズとの相性もおすすめです。
ブルゴーニュ産のエポワスなどのウォッシュチーズやカマンベールなどの白カビチーズは特に調和します。
ガメイのワインはどれも濃過ぎることがなく、肉、魚介、チーズなど幅広く料理に合わせられる魅力があります。
ただし、ボジョレー・ヌーボーのような甘くチャーミングな香りが強いタイプには少し注意が必要です。
料理には甘いベリーのジャムを添えるようなイメージで、クセの穏やかな肉やフルーツを使った前菜やピザ、赤いベリーのデザートやチョコレートなどがおすすめです。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020
・The World Atlas of Wine 8th Edition/HughJohnson&JancisRobinson