最終更新日:2021/03/09
ブショネ (Bouchonné)とは、フランス語で「コルク臭」を意味し、英語では「Cork Taint(コルク汚染)」と呼ばれます。
その名の通りコルクからワインに不快な原因物質が移ることでワインが汚染されます。
ブショネのワインに当たるのは決して珍しいことではなく、ワイン100本中2~5本は存在すると言われています。
ブショネのワインからは、カビ、古い段ボールのような強いカビ臭が感じられワイン本来の香りを覆い隠してしまいます。
このカビ臭の原因としていくつかの物質が指摘されていますが、特にTCA(2,4,6-トリクロロアニソール)という物質がブショネに最も強い影響を与えるとされています。
TCAはほんの微量(2-5ng/l)でも多くの人が感知するほど強力です。さらに、TCAは嗅覚経路を遮断し他の香り自体も感じにくくすることが分かっています。
TCAは、コルクなど木材に含まれるフェノールと塩素が反応して生まれたTCP(2,4,6-トリクロロフェノール)という物質をカビなどの微生物が代謝することで生成されます。特に塩素系の漂白剤や消毒剤の使用はブショネを生じさせる大きな原因と言われています。また、コルク樹の防カビ剤として使用されたTCPがコルクに残留した場合もTCAが生じる原因となります。
TCAはコルクに限らず、木樽やスノコ、建材などセラー内の至る所に存在している可能性があります。
TCAと同程度に強力なブショネの原因物質にTBA (2,4,6-トリブロモアニソール)があります。
TBAもTCAと同様に強いカビ臭をワインにもたらします。
TBAは、屋内の殺菌剤や木材の防腐防カビ剤、防火剤などで使われるTBP(2,4,6-トリブロモフェノール)という物質とカビ菌が作用することで主に生成されます。
例えば、TBPが使われた木材が内壁に貼られていたら、室内にはTBAが存在している可能性があります。そして、その室内に木樽やコルクが置かれていれば、それらもTBAに汚染される恐れがあります。
このように、TCA、TBAは様々な経路でワインに混入する恐れがあります。
TCA、TBA以外にも、同様のカビ臭をワインにもたらすTeCA(テトラクロロアニソール)やPCA(ペンタクロロアニソール)などの原因物質が指摘されています。
カナダのある調査では、ブショネと判断された2400本のワインのうちTCAが検出されたワインは49%だけだったという結果も出ており、強いカビ臭の原因には様々な可能性が考えられます。
参考
・WINE SCIENCE The Application of Science in Winemaking / Jamie Goode
・The Oxford Companion to Wine / Jancis Robinson
・ワインの香り / 東原和成・佐々木佳津子・渡辺直樹・鹿取みゆき・大越基裕