最終更新日:2021/03/07
ワインの栓を何本も抜いた経験のあるあなたなら、よく見るとコルクにも種類があることにお気づきだと思います。
長さや質感の違いなどさまざまです。
この記事では、ワインのコルクの種類と、コルクにまつわる押さえておきたい基礎知識をご紹介します。
コルクは、そもそも「コルク樫」という木の厚い樹皮から作られます。
コルク樫の樹皮は、空気を含んだ無数の微細な細胞壁で形成されています。
それゆえコルクは、水や油を通さず腐食に強く、軽く、弾力があるのが特徴です。
歴史も長く、古代ギリシア時代からコルクが瓶や樽の栓として使われていた記録があるようです。
コルクの産地はポルトガルを中心とした地中海周辺に集中しています。
特にポルトガルは国を挙げてコルクの生産に力を注いでいて、コルク製品のシェア75%がポルトガル産です。
ちなみに、コルク樫の樹皮は再生します。
写真のように、原木を伐採せず樹皮のみを剥がすことで、10年後には新たな樹皮が形成されます。
コルク樫の寿命は200年と言われるので、1本の木からかなりの量のコルクが生産できることになります。
それでは、ワインのコルクの種類を整理してみましょう。
天然コルクは、写真のようにコルク樫の樹皮を円筒形にくり抜いてつくられます。
コルク栓の中で天然コルクは、最も強度があり、価格も高価です。
しかし、天然素材そのものがコルク栓になるため、品質はばらつきがあります。
一般的には、コルクの強度が必要とされる長期熟成させる高級ワインには、より木目が細かく長さも長い天然コルクが使われています。
コルクを粒状にしたものに接着剤を混ぜ合わせ圧搾してつくったコルクです。
コルクの耐久性はやや劣り、天然コルクほどの強度はありません。
ただし、粉砕して合成させるため、コルク樹皮の状態に左右されず、品質は安定しています。
価格も天然コルクよりも安価であり、カジュアルラインのワインの栓としてよく使われています。
強度が必要とされる両端に天然コルクを貼り、高級感と耐久性を増した圧縮コルクです。
安価でありながら、高級感のある点が一番の魅力です。
ポルトガルのコルクメーカー、Amorim(アモリム)社の「Twin Top(ツイントップ)」が有名です。
コルク栓は、高級感があり、ワイン生産者の誰もが使いたいワイン栓でしょう。
しかし、コルク栓を使う生産者の最大の悩みが、コルク臭のリスクです。
いわゆる「ブショネ」と言われるワインの欠陥を引き起こします。
このコルク臭の原因は、TCA(トリクロロアニソール)と呼ばれる物質です。
TCAがコルクに微量でも含まれていた場合、ワインは独特の不快臭に覆われ品質が大きく低下してしまいます。
そのリスクを避けたい生産者は、プラスチックコルクやスクリューキャップなどブショネのリスクがないワイン栓を導入する場合もあります。
以上のように、コルク栓にはブショネのリスクがついてまわります。
とはいえ、コルク業界も品質向上への努力を行っています。
事実、コルクメーカー各社の製造工程見直しや新商品の開発などでコルク汚染の比率は減っています。
例えば、以下のコルク栓は、TCAのリスクフリーのものとして有名です。
ポルトガルのコルク最大手Amorim(アモリム)社の「NDtech(エヌディーテック)」は、TCAリスクゼロを保証した世界初の天然コルクです。一つ一つ最先端技術によって検査し、TCAリスクのあるコルクを除去します。
参照はこちら→アモリム社のNDtech紹介ページ
また、このアモリム社は2020年までにすべての商品をTCAフリーにすると宣言しています。
フランスのOeneo(エネオ)グループの「Diam(ディアム)」は、コルク汚染フリーの微細圧縮コルクです。通常の圧縮コルクよりも微細に粉砕されたコルクを使い、耐久性もより優れています。天然コルクよりも安価でありシェアを伸ばしています。
参照はこちら→Diam製造工程ページ
このように、ワインのコルク栓も進化していて、コルク汚染の確率も確実に減ってくるでしょう。
近年は、コルクだけでなくスクリューキャップやプラスチック栓など他素材ワイン栓のシェアも増加しています。
しかし、個人的にはワイン栓はコルクであってほしいとも思います。
ワインを抜栓するときのドキドキ感やコルクの高級感もワインの魅力と感じるのは私だけではないでしょう。