最終更新日:2021/03/21
コラージュ(Collage)は、清澄剤を使用してワインの透明度を上げる清澄作業を指すフランス語で、英語では「ファイニング(Fining)」と言います。
コラージュは、単に濁りを減らす以外に以下のような効果もあります。
コラージュを行うことで、ワインに含まれるタンニンやその他フェノール類の量が減少し、より渋みが穏やかな柔らかい触感のワインになります。
ワインに含まれるタンパク質は濁りの原因物質のひとつです。
赤ワインの場合は熟成によってタンニンがたんぱく質と重合して沈殿しますが、白ワインの場合は残ります。
また、タンパク質はとても小さいため濾過では除去しづらい性質もあります。
さらに、タンパク質は熱に不安定で、瓶詰後に変性してワインの白濁を引き起こす恐れもあります。
そのため、ワインの透明度を保つという点でもコラージュは大きな効果があります。
現在、様々な清澄剤がコラージュで使われています。主要なものに以下のような清澄剤があります。
最も歴史のある清澄剤のひとつで、卵白に含まれるアルブミンがワイン中のタンニンに作用し沈殿させます。
アルブミンは、特に粗く収斂性の強いタンニンを優先的に吸着すると言われています。清澄効果も穏やかで、特に上質な赤ワインの清澄剤として広く使用されています。
卵白と同様に特に厳しいタンニンを除去する効果があります。動物性だけでなく植物性も使用されています。
魚の浮袋から抽出されたアイシングラスというゼラチンで、ビールの清澄剤としても古くから使用されています。特に白ワインのコラージュで使用されます。
牛乳に含まれるカゼインが、タンニンや色素成分、フェノール類を吸着します。特に白ワインの脱色に使用されます。
ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とした粘土鉱物で、特にワイン中のタンパク質を吸着します。
赤白どちらでも使われますが、特にタンパク質を除去したい白ワインのコラージュに使用されています。
ベントナイトは清澄効果が高く、過剰に使用すると重要な香味物質まで失ってしまう恐れがあり、使用に注意が必要な清澄剤でもあります。
二酸化ケイ素で構成される清澄剤で、白ワインやロゼワインのコラージュで主に使われます。白ワインでは、よくゼラチンと組み合わせて使用されます。
ワインに含まれるフェノール類を吸着する合成物質で、主に白ワインのフェノール類の除去に使用されます。
色素成分やオフフレーバーを吸着するために白ワインのコラージュで使用されます。
以上のように、清澄剤の種類によって沈殿させる物質やその効果が異なります。生産者は、コラージュの目的に応じて清澄剤の種類を選択します。
近年の流れとして、ヴィーガンやベジタリアン、アレルギーなどの懸念から動物性ではない清澄剤が選ばれる傾向があります。
アレルギーに関しては、卵や牛乳などのアレルギー物質は清澄後に行う濾過によって無害レベルまで除去されるため基本的には問題ありません。EUではワインに含まれる卵や乳製品の含有量が0.25mg/Lを超える場合はラベル表示が義務付けられています。
コラージュを行っていないワインには「ノン・コラージュ (Non Collage)」と表記されることもあります。
参考
・The Oxford Companion to Wine / Jancis Robinson
・Understanding Wine Technology / David Bird
・日本ソムリエ協会教本 2020