最終更新日:2021/03/09
シュナン・ブランは、甘いフルーツや花の香りにきれいな酸味が特徴の白ブドウ品種で、とても親しみやすい味わいが特徴です。
この記事では、シュナン・ブランの特徴や生産地、料理との相性など知っているとより楽しめる知識を解説します。
シュナン・ブランは、フランス・ロワール地方原産の白ブドウ品種です。
栽培の歴史も長く、9世紀にロワール地方アンジュー(Anjou)で生まれたという説があります。信憑性のある最初の記録としては、1496年にシュノンソー近くの土地に「プラン・ダンジュー(Plant d’Anjou)」というブドウがアンジューから持ち込まれたという記録があります。そのプラン・ダンジューが今のシュナン・ブランである可能性が高いされています。
シュナン・ブラン(Chenin Blanc)の名前は、トゥーレーヌの「Mont Chenin (シュナン山)」に由来するという説があります。
シュナン・ブランは、フランス・ジュラ地方で栽培されている「サヴァニャン(Savagnin)」を片親に持つことがDNA鑑定によって明らかにされています(1999年)。さらに、「ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)」「トゥルソー(Trousseau)」は同じ親をもつ兄弟である可能性も極めて高いとされています。
シュナン・ブランは産地によって以下のような別名も使われています。
・ピノー・ド・ラ・ロワール(Pineau de la Loire):ロワール地方
・スティーン(Steen):南アフリカ
シュナン・ブランのワインには、極甘口から辛口、スパークリングワインまで幅広いスタイルがあります。
辛口のシュナン・ブランには以下のような特徴があります。
・黄色からゴールド
・粘性はやや強め
ブドウの成熟度によって淡い黄色からゴールドまで幅があります。
・リンゴ、カリン、アプリコット、洋梨
・はちみつ ・キンモクセイ
・石灰
シュナン・ブランには、黄色い果実や花、はちみつなど黄色を連想させる香りが特徴です。
冷涼な産地のワインには、鉱物的なミネラルの印象も感じられます。
ブドウの成熟度が高いほど、より熟したフルーツやはちみつなど甘く凝縮したニュアンスが強くなります。
・なめらかな口当たり
・豊かな果実味と酸味
・苦味の穏やかな優しい余韻
シュナン・ブランのワインには豊かな果実味があり、明確に甘みが感じられるワインも多いです。
しかし同時に、シュナンブランのワインには味わいの後半から伸びてくる豊かな酸味があります。
たとえ甘口のワインでも豊かな酸は感じられ、膨らみの中に芯となる酸がある味わいがシュナンブランの特徴です。
シュナン・ブランは、現在世界中で栽培されていますが、その多くはフランスと南アフリカが占めています。その他の国には、アメリカ・カリフォルニア州、アルゼンチン、オーストラリアなどがあり、主にブレンド用の補助品種として栽培されています。
以下、主産地であるフランスと南アフリカについて解説します。
フランス・ロワール地方は、最も歴史のあるシュナン・ブランの産地で、フランス国内の栽培面積の大半を占めます。
その中でも特に、ロワール川渓谷の中央部に位置するアンジュー・ソミュール地区、トゥーレーヌ地区で上質なシュナン・ブランのワインが生産されています。
この地域でシュナンブランは、辛口ワイン以外にも「クレマン・ド・ロワール(Crémant de Loire)」「ヴーヴレ・ムスー(Vouvray Mousseux)」などのスパークリングワインで主要品種として使われたり、遅摘みや貴腐から造る甘口ワインにも多く使用されています。
全体としては、アルコールは低めで、ほのかな甘みの優しい口当たりときれいな酸味をもつスタイルが多い傾向があります。
しかし中には、「サヴニエール(Savennières)」の上質なシュナン・ブランなどには、アルコールが高く力強いミネラリーな印象をもつワインも存在します。
南アフリカでは、世界で最も広くシュナン・ブランが栽培されています。
栽培の歴史も長く、かつてはスティーン(Steen)と呼ばれ南アフリカの広い範囲で栽培されていました。ちなみに、このスティーンがシュナン・ブランと同一品種だと認識されたのは1960年代中頃からです。
南アフリカのシュナン・ブランも多用途に使われ、スパークリングワイン、辛口から甘口ワイン、シェリータイプ、ブランデーまでさまざまです。
歴史的には甘口ワインやブランデーに使われることが多かったものの、近年は国際市場に目を向け最新の技術や設備で品質に重きを置いたシュナンブランワインが生産されています。
また今後も、南アフリカのシュナン・ブランの樹齢が高くなるにつれ、より土地や品種の個性が表れた上質なワインが期待されます。
豊かな果実味と酸味が特徴のシュナン・ブランは、幅広く料理と合わせられます。
フレッシュで軽やかな印象のシュナン・ブランには、リンゴやシーフードを使ったサラダや前菜。
凝縮感の強いタイプには、白身魚のムニエルなども良いでしょう。
また、シュナン・ブランには余韻の優しいワインが多いため、和食との相性もおすすめです。
ブリの照り焼きなど甘辛い醤油系の味付けの料理に思った以上によく合います。
シュナンブランは、ロワール渓谷の周辺が産地であることからも川魚が定番と言われますが、ワインの柔らかな甘みはブリなどの脂ののった魚にも上手く調和します(なるべく臭みの少ないものが良い)。
他にも、同郷のロワール地方のシェーヴルチーズを合わせたり、甘口ワインにはリンゴのタタンなど、黄色いフルーツを使ったデザートもおすすめです。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020