最終更新日:2021/03/09
シャンパンは、世界最高峰のスパークリングワインと言われています。
その品質の重要な鍵になっているのが製法です。
シャンパンは、どのスパークリングワインよりも手間と時間をかけてつくられています。
一体他のスパークリングワインと何が違うのでしょうか?
世界が手本にするシャンパンの製法をぜひ一度理解しておきましょう。
シャンパンの製法は、一般的にはトラディショナル方式(méthode traditionelle)」と呼ばれています。
トラディショナルと呼ぶように、スパークリングワインの製法として最初に確立された伝統的な製法です。
簡単に言うとワインを瓶に詰め、酵母と糖分を加え、密閉した瓶内で二次発酵を起こさせる製法です。
しかし、シャンパンの製法にはトラディショナル方式を超えた厳しい規制があります。
それでは、より具体的にシャンパンの製法を見ていきましょう。
Vendange(ヴァンダンジュ)
シャンパーニュ地方では、通常9月半ば~10月初旬に収穫が開始されます。
シャンパーニュ地方では規定によって収穫は全て手摘みで行う必要があります。
Pressurage(プレスラージュ)
収穫したブドウを圧搾所に運び、大きな圧搾機で絞ります。
ポイントは、
●ブドウが傷む前にできるだけ早く圧搾作業を始める
●搾汁に黒ブドウの皮の色がつかないよう、静かに圧搾する
また、シャンパンの圧搾作業は2段階に分けて行われます。
搾汁も分けて取り出され、それぞれ次の名前が付けられています。
キュヴェ(Cuvée)
最初の圧搾で、4000kgのぶどうから2050lを絞り、その搾汁を「キュヴェ」と呼ぶ。ラ・キュヴェ(La Cuvée)、テット・ド・キュヴェ(Tête de Cuvée)とも呼ぶ。要するに「一番搾り」。
タイユ(Taille)
キュヴェを取り出したら、さらに500lの圧搾を行い、その搾汁を「タイユ」と呼ぶ。プルミエール・タイユ(première taille)とも呼ぶ。
シャンパンに使える搾汁は、4000kgのブドウにつき、この「キュヴェ」と「タイユ」の合計2550lだけと規定されています。
キュヴェとタイユはそれぞれ分けて発酵され、その後ブレンドして使われます。
当然品質の高いシャンパンは、キュヴェの比率が高くなります。
Première Fermentation(プルミエール・フェルマンタシオン)
ブドウ果汁を、樽やステンレスタンクで一次発酵させてベースワインをつくります。
キュヴェ・タイユ別、村や畑、ブドウ品種によって別の樽やタンクに分けて発酵作業が行われます。
発酵作業は、まず果汁に酵母を添加し、アルコール発酵させます。
その後、造り手によっては、マロラクティック発酵と呼ばれる酸を柔らかくする作業を行いベースワインの完成です。
Assemblage(アッサンブラージュ)
収穫の翌年2月頃に、前年までの貯蔵ワイン(リザーヴワイン Vins de Reserve)を含め、ベースワイン30~50種を調合します。
醸造責任者の指揮のもと、各メーカーのブランドイメージに沿って調合されます。
シャンパンの製造で最も重要な工程で、醸造責任者のセンスや経験が問われます。
また、リザーヴワインの配合比率もシャンパンの味わいを決める重要な要素です。
リザーヴワインの比率が高いほど、シャンパンはより熟成感のある深みを感じる味わいに仕上がります。
Tirage(ティラージュ)
調合したワインを巨大タンクに入れ、そこに酵母と1lあたり24gのショ糖を加え、瓶詰します。
つまり、ワインにさらに酵母とその餌であるショ糖を加えることで瓶の中で再びアルコール発酵を生じさせます。
Deuxieme Fermentation en Bouteille(ドゥジエム・フェルマンタシオン・アン・ブテイユ)
アルコール発酵によって生じた二酸化炭素が瓶内に閉じ込められワインに溶け込むことで発泡ワインになっていきます。
6~8週間で二次発酵が終わり、働き終えた酵母はオリとなって瓶底にたまります。
Maturation sur lie(マチュラシオン・シュール・リー)
オリ(酵母の死骸)とともに熟成させることで、酵母から出るうまみがワインに溶け込んできます。
熟成期間が長くなるにつれて、泡は細かくなり、香味も複雑になります。
シャンパンの規定では、ノン・ヴィンテージ(複数年のワインをブレンドしたもの)で最低15か月、ミレジメ(単一年のもの)で最低3年の熟成義務があります。
この熟成期間の長さは、シャンパンの品質に大きく影響します。
プレステージクラスだと5~7年以上。ノン・ヴィンテージでも生産者によっては3年以上熟成させる場合もあります。
Remuage(ルミュアージュ)
出荷が近づくと、オリ抜きに備えて瓶に沈殿したオリを瓶口に集める作業を行います。
ピュピトル(オリ下げ台)と呼ばれる台に瓶口を挿し、職人が5~6週間に渡って毎日瓶を1/8ずつ回転させながらオリを瓶口に集めていきます。
シャンパーニュといえば、この写真のように、地下のカーヴにピュピトルが並んでいる絵を想像する方も多いはずです。
現在は、ジロパレットと呼ばれる機械で行われるのが主流で、これだと1週間で動瓶作業が終り、効果も変わらないそうです。
とはいえ、ジロパレットは大型の瓶やプレステージシャンパンのような特殊な形の瓶には使えないため、現在もピュピトルによる作業は行われています。
Dégorgement(デゴルジュマン)
瓶口をマイナス20℃の塩化カルシウム水溶液につけて、たまったオリを凍らせます。
王冠の栓を外すと、瓶内の圧力で凍ったオリが飛び出しオリ抜きは終了です。
Dosage(ドザージュ)
オリ抜きで目減りしたところに、「門出のリキュール」と呼ばれるシャンパンの原酒に糖分を加えたリキュールを添加し味わいのバランスを取ります。
添加する糖分の量は、生産者や銘柄によって異なります。
Bouchage(ブシャージュ)・Etiquetage(エティクタージュ)
コルクを打って、針金で固定し、ラベルを貼ります。
昔は手作業で行われていましたが、現在は「オリ抜き」から「ラベル貼り」まで通して機械で行うのが主流です。
時間にして1分もかかりません。
以上見てきたように、シャンパンの製法の一番の特徴は、瓶内で二次発酵させることです。
そして、そのままオリとともに何年も熟成させることで泡が細かく繊細な口当たりで、複雑で深みのある香味に仕上がります。
しかし、シャンパンの魅力は、このような製法だけでは表現できません。
それはテロワールと歴史でしょう。
シャンパーニュ地方のテロワールから生まれる、ここでしか表現できないブドウの味。
そして、長い伝統を持つ圧倒的な存在感とブランドイメージ。
製法のこだわりに加えて、これらの要素がシャンパンの価値を一層高いものにしています。
こういった背景に思いを馳せながら味わえば、シャンパンはより深く高貴なものに感じませんか?