マセラシオン・カルボニックの基礎知識!ワインの特徴とは?ボジョレーヌーボーだけじゃない?

最終更新日:2019/11/21  

 

毎年11月後半になると話題になるボジョレーヌーボー。そのボジョレーとよくセットで出てくるのが「マセラシオン・カルボニック」というワイン醸造技術です。

 

そして、今やその技術はフランスを超えて世界中のワイン造りに使われています。

 

この記事では、マセラシオン・カルボニックの基本からそのワインの特徴、現在のワイン造りのトレンドまで詳しくご紹介します。

 

 

マセラシオン・カルボニックとは?

 

マセラシオン・カルボニックとは、ワインの醸造技術のひとつです。

 

通常のワインの発酵は、酵母の力で糖分をアルコールに分解することで起こります。一方で、マセラシオン・カルボニックは無酸素の環境でブドウ細胞内の代謝作用を利用します。

 

二酸化炭素で満たされたタンクで無傷のブドウを房ごと放置することで細胞内で発酵が始まり、微量のアルコール生成と色素・香り成分抽出の促進、酸の変換などが起こります。

 

つまり、マセラシオン・カルボニックを起こすために重要なのは、次の2点です。

 

 

無傷のブドウである

無酸素の環境に置く

 

 

ブドウの皮に傷がつくと、そこから果汁が滲出し、その果汁がアルコール発酵を起こしてしまいます。そのため、収穫でブドウを傷つけないために、ブドウの皮が厚い品種であったり手摘みによる慎重な作業が必要です。

 

一般的なマセラシオン・カルボニックでは、無酸素環境をつくるために人為的にタンクにボンベで二酸化炭素を注入します(ドライアイスを一緒に入れる方法もあります)。

 

 

セミ・マセラシオン・カルボニックとは?

 

マセラシオン・カルボニックを行うワインで最も有名なのが「ボジョレーヌーボー」でしょう。しかし、そのワインの解説を読むと「セミ・マセラシオン・カルボニック」という言葉が出てくることがあります。これはどういう意味なのでしょうか?

 

「セミ・マセラシオン・カルボニック」とは、その名の通り、部分的なマセラシオン・カルボニックです。具体的には、人為的な二酸化炭素の注入を行わない製法です。

 

まず、タンク下層で潰れたブドウからでた果汁が酵母によってアルコール発酵します。アルコール発酵で発生する二酸化炭素は酸素よりも重いため、下層の果汁が発酵して炭酸ガスが発生することでタンク内の酸素は自然と上部に押し出されます。そして、タンク内は二酸化炭素で重鎮され、無酸素状態になります。結果、タンク上部の無傷のブドウにマセラシオン・カルボニックが起こります。

 

つまり、タンク下部の果汁でアルコール発酵を起こさせ、自然にタンク内を無酸素状態にすることで、無傷で残ったタンク上部のブドウにマセラシオン・カルボニックを生じさせる方法です。

 

この手法は、ボージョレで伝統的に行われていたため、「マセラシオン・ボージョレーズ」とも呼ばれています。この方法は、二酸化炭素を注入するマセラシオン・カルボニックよりも時間や手間はかかる分、よりナチュラルで、そのブドウの個性がより表現されたワインに仕上がります。特に、小規模生産者やハイレンジのボジョレーヌーボーでこの手法が採られています。また、タンクを密閉にしなかったり、どのくらいの比率で細胞内発酵させるかは生産者によってそれぞれです。

 

 

マセラシオン・カルボニックをしたワインの特徴

 

次に、マセラシオン・カルボニックをすることで、ワインにはどのような特徴が表れるのか見ていきましょう。色、香り、味わいのそれぞれの特徴は下記の通りです。

 

色の特徴

マセラシオン・カルボニックをすると、果皮の色素の抽出が促進されます。

この製法で造られたワインは、鮮やかです。色の濃淡はそれほど強くありませんが、赤みがしっかり出た独特の鮮やかさがあります。例えば、ボジョレーヌーボーは人工的とも思えるような紫色をしています。

 

香りの特徴

香りはワインのブドウ品種によってさまざまな感じ方がされますが、マセラシオン・カルボニックをしたワインの大半は熟成の浅いとても若いワインです。そういったワインには、ケイ皮酸や酢酸イソアミルなどのエステル系の香りが全面に出てきます(ワインの専門用語で第二アロマと言ったります)。具体的には、フルーツキャンディーやお花のような華やかでチャーミングな香りです。

例えば、ボジョレーヌーボーの場合、イチゴやラズベリーなど赤い果実のキャンディー、バナナ、スミレの花の香りを感じます。

 

 

味わいの特徴

マセラシオン・カルボニックをすると、酸味が穏やかになります。それは、この作用によって果汁に含まれるリンゴ酸(尖った酸味)がコハク酸などの他の成分に変わるからです。約50%のリンゴ酸が変換されます。

また、鮮やかな色に反して渋みもマイルドです。マセラシオン・カルボニックで色素の抽出は促進されますが、タンニン(渋み成分)の抽出は穏やかです。

結果として、フレッシュでフルーティーかつ酸味や渋みの穏やかな柔らかいワインに仕上がります。

 

 

マセラシオン・カルボニックはボジョレーヌーボーだけじゃない

マセラシオン・カルボニックは、ボジョレーヌーボーとセットで説明されることが多いですが、現在世界中でこの技術を実験的に導入する生産者が増えているそうです。(参考:Carbonic Maceration Breaks Out of Beaujolais / wine-searcher.com)

 

その大きな理由として、地球温暖化とワイン消費者の好みのライト化が挙げられます。

 

地球温暖化によってブドウがよく熟すと、ブドウの糖度やタンニン分が高くなります。すると出来上がるワインも当然よりアルコール度数が高く濃厚なワインになります。一方で、世界的に消費者のワインの嗜好は、ライトな味わいへとシフトしています。この変化に対応する策のひとつとしてマセラシオン・カルボニックを導入する生産者が増えているようです。

マセラシオン・カルボニックによって、色や香りを華やかにしながらタンニンの抽出を抑え、フレッシュで早飲みのワインをつくることができます。さらに熟成を待たずにリリースできるので生産コストも抑えられ低価格でワインを販売できます。例えばオーストラリアやカリフォルニアの暑い地域のワインで、若い世代をターゲットにした低価格でジュースのような飲みやすいワイン造りに使われたりしています。

 

ブドウ品種も、ボジョレーヌーボーで使われるガメイ種のほか、ピノ・ノワール、シラー、グルナッシュなどの黒ブドウ。さらに、ピノ・グリやシャルドネなど白ブドウでも実験的に使われ始めています。

 

 

また、前半で挙げたセミ・マセラシオン・カルボニックのように、部分的にこの技術を使う生産者も増えています。近年ブルゴーニュのワインでも増えている全房発酵も厳密には部分的にマセラシオン・カルボニックが起こっています。

 

このように程度の差こそあれ、今後マセラシオン・カルボニックの技術が世界的に使われるようになるという考えも間違いではないでしょう。

 

ワイン造りも時代によって変化し発展していきます。その変化を感じる一つとして、ぜひマセラシオン・カルボニックに注目してみてください。あなたの心を動かすワインに出会えるかもしれません。

 

 

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