最終更新日:2021/03/09
カベルネ・ソーヴィニヨンは、ワイン売り場で必ず目にするほどたくさんのワインが造られており、ワイン好きならぜひ理解を深めたいブドウ品種です。
この記事では、カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴や産地、料理との相性まで知っているとより楽しめる知識をご紹介します。
Contents
カベルネ・ソーヴィニヨンは、世界で最も広く栽培されている黒ブドウ品種のひとつです。
フランスのボルドー地方が原産地と言われています。
現在は誰もが知っている有名なブドウ品種ですが、最初の記録は18世紀中頃であり、栽培の歴史は比較的浅いブドウ品種でもあります。
カベルネ・ソーヴィニヨンは、同じボルドー地方で栽培されている「カベルネ・フラン」と「ソーヴィニヨン・ブラン」の自然交配によって誕生したことが1997年にDNA鑑定によって明らかにされています。
カベルネ・ソーヴィニヨンは、樹勢が強く晩熟。乾燥に強く水はけの良い砂利質の土壌を好みます。
ブドウの粒は小粒で、果皮は厚く、色も濃いため、タンニンや色素成分の多いワインを生みます。
それゆえ、カベルネ・ソーヴィニヨンは他のブドウ品種よりも長期熟成力に長け、高級ワインにも多く使用されています。
ブドウの産地は、ボルドー地方を含むフランス南西部の他、アメリカ・カリフォルニア州、オーストラリア、チリ、アルゼンチン、スペイン、イタリア、南アフリカなどが主産地として挙げられます。
カベルネ・ソーヴィニヨンのワインは、ボディのある力強い味わいが特徴です。
・非常に濃く、紫の色調が強い
・熟成による色調の変化は比較的穏やか
果皮が厚く小粒であるため、多くのワインには黒みを帯びた濃い色調が見られます。
・黒果実 (カシス、ブラックベリー)
・ヒマラヤ杉 ・ミント、メントール
・べジタル
カベルネ・ソーヴィニヨンの香りには、凝縮した黒系果実の香りの中に、杉やメントールのようなニュアンスがあり、この爽やかな香りが全体の印象をより上品なものにします。
かつては、ビーマンなどの青臭さが特徴とも言われていましたが、近年は際立って青さを感じるワインは少なくなりました。
また、カベルネ・ソーヴィニヨンは樽熟成されることが多く、樽由来のクローヴやヴァニラ、ココナッツの香りも多くのワインに感じられます。
熟成能力も高く、それによって土やキノコ系の熟成香も感じられます。
・アルコールは高くヴォリューム感がある
・力強い酸味とタンニン
カベルネ・ソーヴィニヨンは基本的に温暖な産地で栽培されているため、アルコール度は高い傾向があります。
味わいには、酸とタンニンが明確に感じられ、骨太で筋肉質な引き締まった味わいを感じます。
カベルネ・ソーヴィニヨンは、現在世界中で広く栽培されていますが、以下3つの主要産地の特徴についてご紹介します。
カベルネ・ソーヴィニヨンの原産地であるボルドー地方では、現在も世界中の愛好家を魅了する素晴らしいワインが生産されています。
特にメドック地区とグラーヴ地区と呼ばれるエリアから上質なカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培されています。
この地域のワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンの他に、「メルロ」「カベルネ・フラン」などのブドウをブレンドして造られます。
これらのブレンドにより、ワインはバランスの取れた高貴で複雑なワインに仕上がります。
このメドック、グラーヴ地区には生産者(シャトー)ごとに格付けも存在します。
最も格の高い1級には「シャトーマルゴー」などいわゆる5大シャトーと呼ばれるシャトーがあります。
ボルドー地方の赤ワインは他の産地に比べてよりドライで、細かい酸とタンニンによる上品で引き締まった味わいが感じられます。
香りには清涼感のあるグリーンや鉱物的なニュアンスもより感じられ複雑です。
そして、それらの香味は熟成によって調和し、新たな魅力とともに緻密でエレガントに変化します。
特にメドック・グラ―ヴ地区の格付けワインは、20年経っても魅力を失うことはありません。
アメリカ・カリフォルニア州もカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培は盛んで、ボルドー産にも勝る高級ワインも生産されています。
特に、「ナパ・カウンティ」や「ソノマ・カウンティ」エリアのワインが高品質とされています。
この地域のカベルネ・ソーヴィニヨンのワインは、単一品種で仕上げたものから他品種とのブレンドまで多様なスタイルがあります。
しかし、ボルドーワインと比較すると、よりアルコール感と凝縮感があり、果実味が前面に出た甘いニュアンスを感じます。
酸やタンニンもより丸く柔らかい印象で、味わいに膨らみがあります。
チリは、フランスやアメリカに並ぶカベルネ・ソーヴィニヨンの産地です。
チリの多くのワイナリーは、巨大資本の力で広大な畑を持ち、最新の設備や技術を使った現代的なワイン造りが行われています。
日本でも1980~90年代のヴァラエタルワインブームにのってチリのワインは広まりました。
チリのカベルネソーヴィニヨンワインは、定価格でフルーティな親しみやすい味わいのものが多く見られます。
しかし、低価格帯のヴァラエタルワインも確実に品質の向上が見られ、コストパフォーマンスの良さは大変魅力です。
また近年は、よりテロワールや品種の個性を映し出したプレミアムレンジのワインも増えています。
これらの国以外にも、オーストラリアやスペイン、イタリア、アルゼンチン、南アフリカなど幅広い国や地域で、土着品種とブレンドしたり、テロワールの個性が表れた魅力あるワインが造られています。
上述の通り、カベルネ・ソーヴィニヨンは、骨格のある力強いワインを生みます。
料理の相性を考えると、やはり強いタンニンに負けない肉料理がおすすめです。
例えば、以下の食材が相性としておすすめです。
カベルネ・ソーヴィニヨンは肉全般に合いますが、特にタンニンの強いワインには牛肉がおすすめです。
フィレはもちろん、リブロースのような霜降り肉の脂身をもしっかり受け止めてくれます。
ステーキや焼き肉にカベルネ・ソーヴィニヨンの組み合わせは間違いのないチョイスです。
逆に、鶏肉や豚肉など白身の肉の場合、料理がワインに負けてしまうことがあります。
カベルネ・ソーヴィニヨンのハーバルな香りは仔羊の風味とよく合います。
また、ボルドー地方ポイヤック村の料理に「アニョー・ド・レ」と呼ばれる乳飲み仔羊を使った料理があります。
アニョー・ド・レの場合、合わせるワインもポイヤック産のエレガントな赤ワインが王道の組み合わせとされています。
ボルドー地方の伝統料理に、鰻の赤ワイン煮込みがあります。
確かに鰻とカベルネ・ソーヴィニヨンはよく合います。
鰻の脂を強いタンニンが洗い流し、濃厚なソースと調和します。
鰻の蒲焼にもよく合い、山椒の香りとカベルネの清涼感が同調します。
また、甲殻類や赤身、青魚など風味の強い魚介類にもカベルネ・ソーヴィニヨンは合わせられます。
その時は、なるべくボルドー産のカベルネ比率の高い清涼感の強いタイプがおすすめです。サフランなどのスパイスやハーブを効かせるのも良いでしょう。
カベルネ・ソーヴィニヨンは他の品種よりもワインによって格や価格の差が大きいため、言うまでもなく料理とワインの格を合わせるのも大事なポイントです。
カベルネ・ソーヴィニヨンは、酸やタンニンが強く、長期熟成してこそ魅力が増すブドウ品種でもあります。
特に、ボルドー地方の格付けシャトーのものは熟成することで真価が発揮されます。
その香味は、とても複雑かつ緻密で、まさに熟成でしか生まれないワインの神髄ともいえる魅力が感じられます。
カベルネ・ソーヴィニヨンは、そんな熟成の魅力を最も味わえるブドウ品種とも言えます。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020