最終更新日:2021/03/18
樽の中に果汁を入れて行う発酵を樽発酵を言います。
樽発酵は、主に白ワインで行われます。果皮に浸けて発酵を行う赤ワインは、樽の小さな注ぎ口から果皮の出し入れが難しいため一般的には行われません。
樽発酵を行うことで以下のようなメリット・デメリットがあります。
タンクに比べて酸素の流入が多いため、発酵初期に酵母の繁殖が促進され発酵のスタートを早める効果があります。それによってワインも強いボディに仕上がります。
酵母が樽の表面を覆うことで樽とワインの接触を制限するとともに、酵母は樽の芳香成分を香りの少ない物質に代謝します。それによって、樽のフレーバーとワインが溶け込んで調和し、まとまりのあるワインの香味を形成します。
樽発酵を行う場合の多くは、発酵後も一定期間そのまま澱とともに熟成させます。
活動を終えて澱となった酵母は自己分解によって多糖類やアミノ酸をワインに溶出させます。それによって、ワインには厚みや複雑さが加わります。
さらに、多糖類はタンニンなどのフェノール類と重合し沈殿することで、ワインの渋みや苦味を減らし触感を柔らかくします。
樽由来の香味が加わるのと他の発酵容器よりも酸化が早く進むため、ワインのフレッシュさやピュアな果実味は減少しやすくなります。そのため、樽発酵はシャルドネ種の白ワインや甘口ワインなどボディや骨格のあるタイプで行われます。逆に、フレッシュな果実感が魅力の早飲みタイプのワインに樽発酵が行われることはありません。
オーク小樽のコストがかかり、さらに少ない容量のロットで数を仕込むため手間や時間もかかります。
ステンレスタンクなどに比べて衛生面で劣るため、衛生管理を怠ると不要な雑菌や酵母の繁殖リスクが増加します。
参考
・The Oxford Companion to Wine / Jancis Robinson
・Understanding Wine Technology / David Bird
・日本ソムリエ協会教本 2020