最終更新日:2021/03/11
AOPは、フランス語の「Appellation d’Origine Protégée(アペラシオン・ドリジーヌ・プロテジェ)」の略称で「原産地呼称保護」と訳されます。英語では「PDO (Protected Designation of Origin)」、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語では「DOP」、ドイツ語では「gU(Geschützte Ursprungsbezeichnung)」と略されます。
IGPは、フランス語の「Indication Géographique Protégée(アンディカシオン・ジェオグラフィク・プロテジェ)」の略称で「地理的表示保護」と訳されます。英語では「PGI」、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語では「IGP」、ドイツ語では「ggA」と略されます。
その名の通り、ワインの産地の名称を保護し知名度を利用した偽物を防いだり、農産物の品質を保つための制度です。
AOP、IGPどちらも1992年にEUが農産物を対象に導入し、ワインに対しては2009年8月1日に発効、2009年ヴィンテージから適用されています。
AOPとIGPの条件を以下に記します。
AOPの条件
・品質と特徴が、特殊な地理的環境に起因する
・指定地域内で栽培されたブドウのみから醸造する
・生産は指定地域内で行う
・原料はヴィティス・ヴィニフェラ種のブドウのみ
IGPの条件
・生産地に起因する品質、社会的評価、特徴がある
・指定地域内で栽培されたブドウを85%以上使用する
・生産は指定地域内で行う
・原料はヴィティス・ヴィニフェラ種、あるいはヴィティス・ヴィニフェラの交配種
両者の条件を比較すると、AOPの方がより産地との強い関連性が求められます。
ブドウは指定地域内のブドウのみを使用し、ワインの品質も地理的環境に由来する特徴を持たなければなりません。
さらに、官能審査の実施も義務付けられています。
一方でIGPは、生産地に結び付く品質が無くても、社会的評価があれば登録が認められます。
ブドウの産地や品種の規制もAOPよりも緩く、官能審査も任意です。
指定地域は国よりも限定された地域であれば複数の州や県を含むような広い範囲も可能です。
一方、AOPはより限定されたエリアでその土地のテロワールを移した品質が求めらます。
その土地がAOPやIGPに登録されるには、国とEUの両方の審査に通る必要があります。
まずは、各国の担当機関が仕様書などをチェックし、国レベルでの審査を行います。そして国での審査を通った後に欧州委員会に申請書が渡され、EUでの審査が行われます。
国によっては国独自のAOPに相当する制度が存在します。
例えば、フランスには「AOC (Appellation d’Origine Contrôlée)」という原産地呼称保護制度があります。
1935年に制定され、AOP発効よりも前から続く伝統的な制度です。
フランスの場合、このAOCを取得しているエリアはAOPにも登録される必要があります。フランスの審査基準はEUのものよりも厳しいため、AOPの審査に落ちることはまずありませんが、もしAOPの審査に落ちた場合、AOCも撤回されてしまいます。
つまり「AOP」はEUレベル「AOC」は国レベルでの制度ですが、どちらかのみの取得はありえないと言うことです。
また、ワインのラベル表示において、AOCの表示がある場合はAOPの表示を省くことができます。
参考
・はじめてのワイン法 / 蛯原 健介
・日本ソムリエ協会教本 2020