最終更新日:2019/10/16
近年の自然派や原点回帰の傾向にあるワイン造りの中で、アンフォラという言葉をよく聞くようになりました。
アンフォラとは素焼きの瓶(カメ)のことで、要するに土器です。
そのアンフォラをワイン造りで使う生産者が増えています。
一体、アンフォラを使うメリットは何なのでしょうか?
この記事では、アンフォラとは何か、アンフォラで造るワインの特徴について解説します。
上で述べたように、アンフォラとは素焼きの瓶(カメ)です。
紀元前からワインやオリーブオイル、食糧などの運搬容器として使われていて、シンプルなものから装飾を施されたものまで様々です。
アンフォラの形状は、基本2つの持ち手があり、首と脚がすぼまった独特の形をしています。
昔はこれを地面に立てて垂直を保っていたようです。
一方で、現在ワイン造りで使われているアンフォラは持ち手はなく、もっとずんぐりした形をしています。
運搬容器ではなく、醸造・熟成容器としてより適した形です。
それでは、ワイン造りでアンフォラを使うメリットやアンフォラで造るワインにはどのような特徴があるのか見ていきましょう。
アンフォラを使ったワイン造りで最も有名なのが「クヴェヴリ」という製法です。紀元前6000年にも遡るジョージアで行われていたワインの起源となる製法です。
クヴェヴリ製法は、粘土製の瓶を地中に埋めて(地中に埋まっていることで発酵中の温度を安定させる)、その中に果皮や種ごとブドウを入れて自然の酵母で発酵させワインを造ります。クヴェヴリ製法を有名にしたワインがオレンジワインです。
オレンジワインとは、白ブドウを一定の期間果皮に漬けることで皮や種からの色素やタンニン分などを抽出したワインです。
通常の白ワインは、白ブドウを収穫後すぐにプレスしてブドウ果汁を搾り出し、その後に果汁を発酵させます。一方で、オレンジワインは、果汁を搾る前に果皮や種を浸けた状態で発酵させます。つまり、白ブドウで赤ワインのような作り方をしたのがオレンジワインです。
発酵容器としてアンフォラを使う場合、オレンジワインのように果皮を果汁に浸けて発酵が行われることがほとんどです。生産者によっては、ステンレスタンクで発酵したワインと、アンフォラで果皮浸漬したワインをブレンドして熟成させる場合もあります。
このように果皮や種とともに発酵させることで、ワインに果皮から得たほのかな苦味を加えることができます。
また、アンフォラでワイン造りを行う生産者の多くは、クヴェヴリ製法のように自然酵母で発酵させます。それによって、よく目にする大量生産のワインにはない独特の風味と複雑味が表れます。
アンフォラを使って発酵させたワインには、より収斂性と複雑味を感じやすい傾向があるんです。
アンフォラは、発酵容器としてではなく、熟成容器としても使われます。この場合、木樽からの香りやタンニンをワインに付けないクリアさを保ちつつ、ほんのり酸化させることでワインに柔らかさを与えることができます。
木樽のニュアンスのないピュアな風味でありながら、ステンレスタンクでは出せない酸化による丸く柔らかい優しい味わいがアンフォラで熟成させたワインの特徴です。
このようにアンフォラを使ったワイン造りは、紀元前6000年にも遡るとても歴史のある製法です。
これまでは、自然派と呼ばれる特定の生産者が使うことがほとんどでしたが、現在はブルゴーニュの有名ドメーヌなども実験的に使い始めています。
まだアンフォラを使ったワインの評価は未知なところが多いですが、今後はアンフォラの原始的な要素と最新の醸造技術とをバランスよく融合させたワインが増えてくるのではないでしょうか。
今、アンフォラという言葉は、オレンジワインブームにのったトレンド的な側面も感じます(マーケティングの目的で使う生産者も多いのでは?)。
これからさき、アンフォラがさらに見直されるような美味しいワインが増えることを願います。