最終更新日:2021/03/19
ミクロ・オキシジェナシオン(Micro-oxygénation)は、フランス語で「ミクロの酸化」を意味し、ワインに細かい酸素の泡を吹き込むことでワインの酸化を促進する醸造技術です。ミクロの泡立てを意味する「ミクロ・ビュラージュ(Micro-bullage)」とも呼ばれます。
ミクロ・オキシジェナシオンは、1990年代前半に南フランス・マディランのワイン生産者パトリック・デュクルノー(Patric Ducournau)によって、タナ種の赤ワインの厳しいタンニンを和らげる手法として開発されました。現在は、フランス・ボルドー地方やチリなど世界中で広く使用されています。
一般的にミクロ・オキシジェナシオンは、ワインの発酵中あるいは貯蔵中の赤ワインに行う技術です。
タンクの底に設置した多孔質のセラミックのチューブを通して細かい酸素の泡を発生させます。吹き込む酸素の量は厳密にコントロール可能で、適正な酸化を進めることができます。
ミクロ・オキシジェナシオンによってワインに酸素を供給することで、ワインには以下の効果が期待できます。
発酵初期の酸素の供給によって、酵母の増殖が促進されアルコール発酵の開始を早めることができます。それによって、腐造のリスクを減らしたり、アルコール濃度を高める効果があります。
ミクロ・オキシジェナシオンによる酸素の流入によって、ワインに含まれるアントシアニンとタンニンの重合が進み、より安定した色素が形成されます。
また、エタノールが酸化することで生じるアセトアルデヒドもアントシアニンと反応してよりワインの色を安定させます。
上述のタンニンの重合によって、タンニンの収斂性は減少し、触感はより柔らかく変化します。
ワインに微小な酸素を供給することで、ワインの過度な還元状態を避け、硫黄化合物(硫黄系の香り)の生成を防ぎます。
また、草や野菜のようなグリーン系のニュアンスを減らす効果があるとも言われています。
酸化によって香りが発展し、より複雑になります。
一定期間熟成させたような変化が早く表れるため、熟成を待たずにより早く楽しむことができます。
高価なオーク樽を使わずとも穏やかな酸素供給が可能になり、また熟成を待たずに早く市場に出せることでコスト削減につながります。
上記のように、ミクロ・オキシジェナシオンには粗いタンニンや青さを減らし味わいを柔らかくする効果があるため、多くはタンニンが強く熟成を必要とする品種で使われます。
参考
・WINE SCIENCE The Application of Science in Winemaking / Jamie Goode
・The Oxford Companion to Wine / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020