マルベック (コット)

最終更新日:2021/03/09  

 

この記事ではマルベック (Malbec)の特徴や生産地、料理との相性など知っているとより楽しめる情報を解説します。

 

マルベックとはどんなブドウ?

 

マルベックは、フランス南西地方原産の黒ブドウ品種です。

 

 

歴史

マルベックの起源はフランス南西地方ロット川流域のカオール(Cahors)周辺とされ、古くから現地ではコットコーなどと呼ばれ栽培されていました。

 

カオール産のマルベックワインは「カオールの黒ワイン」と呼ばれ、色やボディを強化するためにボルドーワインにもブレンドされていたと言われています。

 

18世紀にはボルドー地方にも移植され(この頃にマルベックと呼ばれ始める)、一時はマルベックがボルドーの畑の6割を占めるまで広がったとも言われています。

 

しかしその後、ボルドー地方ではより土地に合ったカベルネやメルロなどへの植え替えが進み、現在ボルドーでは補助品種として少量栽培されるに留まっています。

 

現在フランスでは、ボルドーの南東に位置する南西地方がマルベックの主産地となっています。

また、現在のマルベックの世界最大産地アルゼンチンでは1853年から栽培が確認されています。

 

 

DNA

マルベックは、プリュヌラール(Prunelard)とマグドレーヌ・ノワール・デ・シャラント(Magdeleine Noire des Charentes)の自然交配によって誕生しています。

マグドレーヌ・ノワール・デ・シャラントはメルロの親でもあることから、マルベックはメルロの片親違いの兄弟でもあります。

 

 

マルベックの別名(シノニム)

マルベック(Malbec)には以下のような別名があります。

コット(Côt, Cot):フランス

オーセロワ(Auxerrois):フランス・ケルシー

ノワール・ド・プレサック(Noir de Pressac):フランス・サンテミリオン

 

 

ブドウの特性

ブドウは小粒で果皮が厚く色素成分やタンニンを豊富に含みます。

 

 

マルベックのワインの特徴

 

マルベックのワインは、フルボディでタンニン豊富な味わいが特徴です。

 

 

マルベックの外観

・黒みを帯びた濃い色調

・紫も強めに表れる

 

「黒ワイン」とも言われるように、黒みを帯びた非常に濃い色調が見られます。

 

 

マルベックの香り

・ブラックベリー、ブルーベリー、ブルーン

・鉄、ジビエ ・樹脂

・丁子、ヴァニラ ・スモーク

 

熟した黒果実の中に鉄や樹脂、黒いスパイスが感じられ、香り全体に黒を連想させるような印象があります。

 

 

マルベックの味わい

・アルコールは高めで凝縮した果実味豊かな味わい

・酸味は中程度からやや高め

・収斂性の強い濃厚なタンニン

 

とても凝縮感があり濃厚な味わいです。

 

マルベックのワインに共通しているのが濃厚なタンニンで、密度のあるタンニンの濃縮感が感じられます。

 

 

マルベックの生産地とスタイルの特徴

 

マルベックは、現在フランス南西部とアルゼンチンで広く栽培されています。

 

 

フランス・カオール

 

フランス国内でマルベックは、南西地方とボルドー地方で主に栽培されています。

 

多くの場合、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどとブレンドされますが、原産地であるカオール(Cahors)ではマルベック主体のワインが多く生産されています。

 

カオールでは、マルベックの作付け比率、ブレンド比率ともに70%以上が義務付けられ、補助品種としてメルロとタナが認められています。

 

カオールのマルベックワインは、凝縮した豊かな果実味とともに酸やタンニンの収斂性が高めに感じられ、力強い骨格がより顕著に表れます。香りには、鉄やジビエのような動物的なニュアンスも強めに感じられます。

 

ボルドーワインのような洗練さよりも、濃厚かつ野性的で田舎っぽさも感じるワインが多い傾向があります。

 

 

アルゼンチン・メンドーサ

 

アルゼンチンは世界で最もマルベックが栽培されている産地です。栽培面積は42,999ha(2018)で圧倒的に多く、2位のフランスとの差は6倍以上です。

 

マルベックは、アルゼンチンのメンドーサ(Mendoza)で最初に栽培が始まり、現在もマルベックの主産地となっています。

 

メンドーサのマルベックは、カオール産に比べてより凝縮感があり酸とタンニンが柔らかくまろやかな印象が感じられます。

実際、ブドウ自体がフランスのものより房も果粒も小さく引き締まり香り豊かだと言われています。原産地カオールでもメンドーサのマルベックをモデルに情熱を燃やす栽培家もいます。

 

メンドーサのマルベックは、カオールよりも動物的なニュアンスは少なく熟成樽由来のヴァニラや丁子などスパイスがより感じられる傾向があります。

 

 

マルベックに合う料理 (相性・食べ合わせ)

 

マルベックのワインは、濃密なタンニンが一番の特徴です。

 

それゆえ、自然と肉料理を呼ぶワインでもあります。

 

柔らかい肉質の料理というよりは、咀嚼時間の長い噛み応えのある肉がおすすめです。例えば、赤身の牛肉はワインの強いタンニンと鉄っぽいフレーバーによく調和します。

 

また、マルベック主体のワインは、比較的シンプルな香味のものが多いため、合わせる料理もバーベキューなどシンプルな調理法の料理が適しています。

 

まさに家庭で「今日は肉を食べるぞ!」というときにおすすめのブドウ品種のひとつです。

 

 

参考

・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson

・日本ソムリエ協会教本 2020

・The World Atlas of Wine 8th Edition/HughJohnson&JancisRobinson