最終更新日:2021/03/11
「スキンコンタクト」というワインの醸造技術に関する専門用語があります。
ワインの説明書きでも結構目にする言葉です。
この記事では、スキンコンタクトとは、どのような技術なのか、そしてスキンコンタクトしたワインはどのような特徴があるのか解説します。
スキンコンタクト(skin contact)は、その言葉の通り「果皮と果汁を一定時間接触させておく」工程のことを言います。
同じ意味の用語に「マセレーション(maceration)」という言葉があります。マセレーションは、赤ワインやロゼワインの醸造用語として使われます。
一方、スキンコンタクトは、基本的に白ワインの醸造用語として使われます。
通常、白ワインは収穫されたブドウをすぐにプレス(圧搾)して果汁を搾ります。
しかし、スキンコンタクトを行う場合、プレスする前にブドウを半分潰した状態で約4~24時間、低温で果皮と果汁を接触させます。
では、どうしてスキンコンタクトをするのでしょうか?
スキンコンタクトの目的は、下記です。
ワインの香りをより華やかで複雑にする
ボディをより強くする
熟成のポテンシャルを強化する
スキンコンタクトをすることで、果皮や種から香りの成分や前駆体、ポリフェノールなどが果汁に浸み出します。
ブドウの果皮のすぐ内側には香りの成分が最も多く含まれています。
ですので、スキンコンタクトの工程によってブドウの本来持つ香りの特徴がワインにより表れるんです。
また、酸味を減らしたり、旨味の生成を促したり、良い発酵へ導くことでワインの味わいもより豊かになります。
果皮や種からくるポリフェノールの酸化防止作用によって、熟成のポテンシャルも増すことができます。
基本的にスキンコンタクトは、未熟ブドウからくる青臭さを減らしてブドウ本来の香りをより表現するために行います。
つまり、冷涼な産地に多く栽培されているアロマティックなブドウ品種に多く使われます。
例えば、次のようなブドウ品種です。
ソーヴィニョン・ブラン(フランス・ロワール地方やボルドー地方)
セミヨン(ボルドー地方)
ミュスカやリースリング(フランス・アルザス地方)
甲州
スキンコンタクトはワインにブドウの個性をより表現するために行われる醸造技術です。
しかし、スキンコンタクトを行うことでワインにマイナスの要素を与えてしまうリスクもあります。
例えば、果皮や種からポリフェノールが多く出過ぎてワインの苦味が際立ってしまったり、温度管理がうまく出来ず酸化による風味の劣化や不快な香り成分の生成や浸出に繋がる恐れもあります。
収穫したブドウの熟し方は、年によって違います。
ですのでスキンコンタクトを行う場合、生産者は健全に熟したブドウを丁寧に収穫し、適正な環境でブドウの成熟度によって最適なスキンコンタクトの時間を調整する必要があります。つまり、造り手のセンスが大きく試される難しい技術でもあるんです。
スキンコンタクトも生産者のセンスを見る要素として頭に入れておくと新しいワインの見方が増えるかもしれません。