最終更新日:2021/03/09
多くの人は、ボルドーと言えば赤ワインを思い浮かべると思いますが、上質な白ワインの産地でもあります。
そのボルドーの白ワインを知るうえで、「セミヨン」というブドウ品種の理解は欠かせません。
この記事では、セミヨンとはどのようなブドウ品種なのか、ワインの特徴や産地、料理との相性などを解説します。
セミヨンは、フランス・ボルドー地方が原産の白ブドウ品種で、18世紀まではボルドーのソーテルヌ村や南西地方のみで栽培されていたとされます(最初の記録は1736年)。
その後、世界中で栽培されるようになりますが、現在は世界の多くの地域でシャルドネなど他の品種への植え替えが進み栽培面積は減少傾向にあります。
セミヨンは果皮が薄いため貴腐菌が繁殖しやすいのが特徴のひとつです。
ボルドー地方のソーテルヌ村やその周辺の地域では世界最高級の貴腐ワインが造られています。
また、セミヨンと相性のよいブドウ品種がソーヴィニヨン・ブランです。
ボルドーをはじめ多くのセミヨンワインは、ソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることが多いのも特徴です。
セミヨンは、完熟しないとハーブのようなグリーンノートと酸味が表れ、ソーヴィニヨン・ブランのような味わいになります。
一方で、完熟させたセミヨンは、酸味は穏やかでボリューム感のあるふくよかな味わいです。
産地や製法によって色調に差はありますが、酸化熟成によって色が濃くなりやすい性質があります。
また、他のブドウ品種よりも粘性は強めでオイリーな質感も特徴です。
メロン・カリン・イチジク・黄桃・パイナップル
カモミール・蜜ろう・ペトロール(重油)
成熟度の高いセミヨンワインからは、甘く熟したフルーツ香を強く感じます。
さらに樹脂系の印象も現れます。
また、貴腐ワインなど糖度が高いワインは、ドライフルーツやはちみつの香りが強くなります。
一方で、収穫を早めて酸を残したオーストラリア・ハンターヴァレーのセミヨンなどからは、ライムやグレープフルーツ、ハーブのようなグリーンのニュアンスが感じられます。
・オイリーな質感
・酸味は少なく果実味が主体のふくよかな味わい
ブドウの成熟度が高いほどオイリーでしなやかな質感になります。
多くの場合、酸味は穏やかで甘みを伴うリッチな味わいが特徴です。
しかし、オーストラリア・ハンターヴァレー産のセミヨンのように、ブドウを早摘みし、酸味を残したフレッシュな味わいのワインもあります。
セミヨンを知るうえで押さえておきたい生産地を見ていきましょう。
セミヨンは、原産地であるボルドー地方や南西地方のベルジュラックやガロンヌ地区で多く栽培されています。
特にボルドー地方南部に位置するグラーヴ地区が高品質なセミヨンワイン産地として有名です。
このエリアのワインは基本的に複数の品種をブレンドしてつくられます。
辛口白ワインの場合、特にソーヴィニヨン・ブランやミュスカデルをブレンドし(ボルドーブレンドとも呼ばれる)、新樽で発酵熟成させる造りが多いです。
香りには豊かなフルーツに新樽から来るヴァニラのような甘くスモーキーな香りが重なります。
味わいは、ワインのブレンドにもよりますが、セミヨンの比率が高いほどコクがあり甘みは強くなります。
ボルドーの辛口白ワインは、全体的に余韻にほのかな塩味や苦味を伴うのが特徴です。
ボルドー地方のソーテルヌ・バルサック地区は、セミヨンを使った世界最高級の貴腐ワインの名醸地です。
この地区は、森を流れる水温の低い小さなシロン川と水温の高い大きなガロンヌ川が合流する地点です。
ブドウが熟した秋には、その二つの河川の温度差から霧が生じることでブドウに貴腐菌が付きやすい環境になります。
まさに、貴腐ワインを造るためのすべての気候条件が揃った選ばれた土地です。
ソーテルヌの上級貴腐ワインは、ドライフルーツや蜜、樽や熟成からくる様々な香りが見事に調和し、滑らかで繊細、深みのある味わいが上品な甘みとともに広がります。
熟成によって味わいはさらに進化し、100年近くの長期熟成にも耐えられると言われています。
ワインの味わいでボルドーと対照的な産地がオーストラリアです。
特にオーストラリア・ハンターヴァレーのセミヨンは特筆に値します。
ハンター・ヴァレーのセミヨンワインは基本的にセミヨン100%で造られます。
しかも、収穫は早めに行うため、低アルコールでブドウに酸を残した軽やかなスタイルが特徴です。
酸が強く長期熟成させることで魅力が増大します。
ボルドーのように新樽の香りを付けることは少ないですが、熟成させることでトーストのような香ばしい複雑なアロマが生まれます。
オーストラリアの他の地域でもセミヨンは多く栽培されています。
ソーヴィニヨン・ブランとブレンドしたり、樽の香りを効かせる場合もありますが、ボルドー産よりも味わいは軽やかな傾向があります。
オーストラリアのセミヨンは基本的に早めの収穫でオイリーさを軽くした爽やかなスタイルが特徴です。
セミヨン種の白ワインも味わいのバリエーションは多様で、広く料理に合わせられます。
以下のような料理がおすすめです。
ボルドー産の辛口白ワインは塩味を感じやすいため魚介類とよく合います。
白身魚や貝類をワインのスタイルに合わせて調理すれば間違いなくマッチします。
爽やかなスタイルにはマリネや蒸し焼き、樽を効かせたスタイルにはグリルなど。
セミヨン比率の高い濃厚なタイプの白ワインにはハチミツのようなニュアンスがでるため、豚肉や鶏肉など白身の肉とも好相性。
はちみつソースを添えるイメージで。
貴腐ワインなど極甘口のスタイルのセミヨンには、フォアグラ料理もおすすめです。
フォアグラのポワレとソーテルヌの貴腐ワインは教科書に出てくるほど鉄板の食べ合わせです。
これまで見てきたようにセミヨンは他品種とブレンドされることが多く、ワインのスタイルには幅があります。
ブレンドで補助品種として脇役になることも多いですが、ワインに甘みや深みを加える重要な役割を果たします。
もちろん、ソーテルヌ地区の極甘口の貴腐ワインでは主役としてなくてはならない存在です。
また、ハンター・ヴァレーのセミヨンのように、セミヨン100%ながら酸味が豊かでフレッシュ感のあるタイプも魅力的です。
ぜひさまざまなスタイルのセミヨンを試して、好みの一本を探してみてください。
参考
・Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, Including Their Origins and Flavours / Jancis Robinson
・日本ソムリエ協会教本 2020